第43話 行動の色

「言葉の通りだネス・クレア。私は君を昔から知っている」

「昔って……じゃあボクの親も」

「ああ、知っているとも。君が無色ではアクリルで生き辛いだろうと森に置いていった男女をな」


 胸がギュッと締め付けられる気分だ。無色だから見限られたのではなく、ボクが過ごしやすいようにと森に置いていった。

 決して親として褒められることでは無いと思うが、それでも、ただただ捨てられた訳では無いと分かったのが何よりも嬉しかった。


「村が近かろうと森は森だ。置いていかれた赤子のお前を見ていなければならなかったのは困りものだったな」

「す、すみません」

「何、謝る必要は無い。勝手にやったことだ。その後この子を見つけて保護しようという気にさせてくれたしな」


 トゥーをちらりと一瞥する。ボクがきっかけで保護したのだからトゥーも捨て子だったのだろうか。

 

「なんで黄色の最上位で捨てられるんですか……」


 無色だから捨てられる。それは分かる。しかし、最上位の三原色のトゥーを捨てる意味がわからない。確かに幼い頃ならばトゥー程の元気な子は色でやんちゃもするだろうが捨てる理由にはならない。


「それは今語るときでは無い。しかし、自分の親よりもこの子を案じてくれるか」

「え、あ。両親のことも知りたいです!」

「ふっ、残念時間切れだ。素直に一番に聞いていれば少しくらい話せたかもな」


 エレトロが四足で身を起こす。その足元にはエレトロに張り付いて充電していたトゥルエノの爽やかな笑顔があった。


「ふっかーーーつ!」


 髪の毛も充電したばかりだからか少しだけ逆立ち、一目見るだけで黄が体に満ち満ちているのが分かる。


「今ならバリバリ全開でいけるよ!」

「では私はこれで。浅葱との結果、楽しみにしているよ」

「ぶっとばしてくる!」

「また、またお話できますか!」


 ボクを捨てた両親のこと、妹のようなトゥーのことをもっと知りたいと思った。エレトロさんから話を聞ける機会を逃したくないと思ったから出た言葉だ。


「……どうだろうな。話したくなったらまた君の前に現れるよ、ネス・クレア」

「ありがとうございます。今は、それでいいです」

「なんの話しー?」

「なんでもないよ、行こうか」


 今は聞けなくても良かった気がする。多分聞いてしまえばボクは瑠璃さんどころではなくなる。もちろん瑠璃さんがどうでもいい訳では無いが全部を使って助けるという覚悟が薄れるのは明白だった。


 トゥーは行き先が分からないからか屋根を伝うボクの後ろを着いてくる。さっきみたいに早すぎて見失うことがないのは助かる。

 かと言ってボクも浅葱の事情に詳しくない。極東に連れ戻すと言うならばアクリルの近くまで何か人をはこべる手段を用意しているはずだが、モンスターが大量にいるアクリルを囲む大自然の中、そんな移動手段は用意できないはずだ。


 なら何で来る。浅葱にもアクリルにもゼインさんに詰め込まれた以上の知識のないボクは何をしたらいいのか検討もつかない。


「なら行先はあそこしかないか……」


 バーミリオンの領地を出て浅葱の領地の中心を目指す。何もきっかけのないボクはアクリル内にある浅葱の家へときっかけを探しに向かった。

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