第33話 闘色祭決勝の色

「さぁさぁ今年は異例中の異例! 今年の決勝は巻でお送りするぜ! 決勝を戦うのは三原色を代表する三人! 青の雹真選手、バーミリオンのネス選手、雷獣と共に生きるトゥルエノ選手だァ!」

「勝てよ坊主!」

「トゥルエノちゃーん、買ったらお菓子買ってあげる!」

「雹真の野郎をぶっ殺せ!」


 観客はボク達に声援をなげかける。余程雹真さんのヒールが効いている、雹真さんを応援する人は誰もいなかった。


「三原色の三つ巴の戦い! それぞれに有利不利が明確に存在するこの組み合わせでどんな戦いを見せてくれるのか! 実況人生でも初めての経験でワクワクしてるぜ!」

「待ってくれ」


 一人会場にたち続けた雹真さんが声を発する。圧倒的な強さを見せつけた雹真さんの一声にルーセントも盛り上げるのをやめる。


「三つ巴なんかじゃない。スカーレットと雷獣対僕だ、勝つのが一人ならそっちが組んで戦おうが関係ないだろ? まとめてかかってきてくれよ」

「おぉっとぉ! 雹真選手、ネス選手とトゥルエノ選手を一人で相手取ると宣言! どこまで傲慢なのか、その強さは遠慮も敬意も知らないぞ!」

「舐められてるね」

「舐められたぞ」


 ボクとトゥルエノ、お互いに雹真さんと一対一で勝てる力はないだろう。ボク達が最高なコンディションでも雹真さんの最悪なコンディションですら勝てるかもしれない程度だろう。


「確かに強いのは認めるけど、あんなに舐められて引き下がるわけにいかないよね」

「舐めていいのは飴と花の蜜だけだ」


 ボク達二人が臨戦態勢に入り、少し重心を動かした途端に雹真さんも迎撃のために少し重心を前にやった。先程の戦いよりは雹真さんも力を入れているのがわかるが、それでもまだ全力の片鱗すら見えない。

 雹真さんの口元が動く反対の扉の前でなにか独り言を呟いたようだが、この距離で聞くすべはない。

 ルーセントさんの戦いの開始の合図を待ってお互いにいつでも色を込める準備をする。


「よぅし! 闘色祭決勝戦、血湧き肉躍る三原色のバトルを俺たちに見せてくれぇ! それでは、始めぇ!」


 ボクは体に熱を満たし、トゥルエノは電気をまとって髪を逆立て、目に黄色が灯る。

 一方雹真さんはなにも目に見える変化がなく、青も白も構えた様子はない。


「トゥー、雹真さんカウンター狙いだ。気をつけて」

「カウンターなんて雷の速度に追いつけるならやってみればいいよ!」

「トゥー!」


 ボクの忠告虚しく電気を纏ったトゥーは地面を走る雷のように雹真さんを襲う。


「はぁ⋯」


 雹真さんは高速の一撃が当たる直前に軽く溜息をつき、眼前に巨大な氷壁を生み出した。

 正面の防御だけでなくギリギリでトゥーの攻撃した拳を奪えるタイミング、一歩出現が遅ければ確実に拳ごと凍らされていた。トゥーも氷壁の出現に反応して慣性に逆らって高速の一撃の肘を畳む。本来捕まっているはずの拳は氷壁の手前で空を切った。


「凄いな雹真さん、あのトゥーの動きに初見でついて行くんだ。ボクも力を見せなきゃ」


 普段やるように熱を四肢に込める。

 トゥルエノ程の加速はなくとも、熱で無理やり動かす体は人間が生み出す出力を超える。

 イメージするのはラヴァさんが見せた炎、相手が氷なら不利は僕だ。しかしいくら最上級の雹真さんの色でも青単色では無い、ボクが受け取った赤も最上級のラヴァさんの物だ。イメージを強く持てば無様に有利で押し負けることも無いはずだ。


「行きますっ!」


 身体強化を習得したボクにはラヴァさんと同じように目に真紅を宿して雹真さんへと向かった。

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