第30話 闘色祭本番の色
「さぁ! 今年もこの季節がやってきました! 血湧き肉躍る闘色祭だぁ!」
「「「ウオオオオオオオ!!!」」」
「すごい歓声だな⋯こんなに盛り上がるんだ緊張してきた」
実況解説の声は待合室にあるモニターから聞こえるのに、待合室は闘色祭会場の真下なのでとても凄い盛り上がりで地響きが上から聞こえる。
「実況解説は無色でお馴染み! 屈強な冒険者の様々な色が大好きなこのわたくしめ! トゥラン・ルーセントがお送り致します!」
「いいぞー!ルーセント!」
「今年もお前の解説楽しみにしてたぞー!」
「実況の人も無色なんだ⋯なんだか親近感湧くな。⋯ボクは赤も貰えたし透明も持ってたけどさ」
思えば赤を手に入れて、色の使い方を覚えて透明を引き出せたのも単なる偶然だ。あのまま村にいればボクは親から貰った色すら気づけずに過ごしていただろう。
「ボクはラッキーだな」
「あー! ネスだ!」
「え、トゥー? なんでここに」
「優勝賞金が100ゴルドだからそれでしばらくのおやつ代とご飯代にするんだー」
目の前にはサラマンダー戦以来のトゥルエノが屋台で買ってきたであろう串やお菓子を持ちながらたっている。
サラマンダー戦のあとも森で過ごしていたため元気になってからも会う機会はなかったが、こんなところで会えるとは思わなかった。
「ネスは元気になったみたいだな、よかった」
「心配してくれてたんだね、ありがと」
「せっかく出来た友達だからな! 来た時に遊べないと困る!」
緊張していたボクにはトゥーの明るさがとても助かった。強ばっていた体がほぐれていくのを感じる。
トゥーの快活さがボクにも元気をくれた。雹真さんと会って、余計な緊張を背負ったのは普段の体の感覚と違う時点で察してはいたが、抜け出す術が見当たらなかった。
「ありがと、トゥー」
強ばっていた拳を開いて優しくトゥーの頭を撫でる。自分がリラックスできた証拠だ。撫でるのはトゥーへの感謝の気持ち代わりだ。
「変なネスだなー。肉串一本あげる、ネスこれ好きだったろ」
「ありがと、朝全然食べれなくてお腹減ってたんだ」
「⋯朝を食べてない、だって。それは大変だ、早く買いに行こ! まだトゥーの番までは時間あるから着いてってやる!」
トゥーはあせあせとボクの手を引こうとするがその誘いについて行くことは出来ない。
「ごめんね、そろそろ行かなくちゃ」
どわぁぁぁぁぁ! 歓声がなる。その歓声は闘色祭が始まったことを伝える。ボクは待合室をでて階段を上がる。
「さぁさぁお待たせ致しました! 闘色祭の開催だァ! 記念すべき一戦目は⋯おぉっと! 俺が一番注目しているスカーレットのスーパールーキー! なんと冒険者になってひと月でスカーレットのお姫様と炎の怪物を討伐してのけたまさかまさかの無色の少年! ネスゥ! クレアァ!」
「「「ワァァァァァァァァ!!!」」」
「す、すごい紹介だな⋯」
開いた扉を手を挙げながらくぐる。あまりにも豪華な紹介にボクは少し口がひきつっていた。
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