人生主観
僕は運の悪い人生を送ってきた。
チョコレートの当たりくじは毎日買っても出たことないし、近所の翔太が「今日からこいつと付き合う」と初めて紹介した彼女は僕の好きな人。
遠足の日は必ず雨が降るし、なくしものをしても見つかったためしはない。
大学受験の日には大雪が降り交通渋滞で第一志望は受ける資格もなく、受かった第二志望の大学では、やる気がそがれて燃え尽き症候群。
そのうち、努力することが馬鹿らしくなり、僕はただこの人生をどのように消化するかだけを考えるようになった。
「はあー」
これで一週間133回目のため息だ。
単純にやることも思いつかなかったのでため息を数えることだけを始めた。これが案外面白く、毎週の憂鬱さを測る指標となった。
布団の中でスマホをいじりながらカウントしてくれるアプリに正の文字を一つ書き足した。
……あ、やべ、そういえば今から大学の授業だっけ?
おもむろにスマホで時間を確認すると、なるほど、あと5分で授業の鐘が始まりを告げる。
これは遅刻かと思う諸君。それがすっとこどっこいコロナが蔓延する現在、オンライン授業なのだよ。
僕は、自分のpcを自身の前に置くとそのままzoomの会議に入った。
そして、そのまままた、布団に入りながら受けることにした。
先生の声が良い心地で眠りに誘う。
「ああ、この教授、開講科目相対性理論じゃなくて睡眠導入に変えたら良いのに」
なんて独り言をつぶやいて、私は教授がひたすら書き進める計算式のホワイトボードにペンが当たる音とそれに伴ってぼそぼそ呟く声を子守歌代わりにし、目をゆっくりと閉じた。
+
次に目を開けた時は、空が真っ赤に僕を照らしていた。
まるで、この世界が終わるならきっとこんな色をしているんだろう。
核爆弾が落ちて少し経った後の消え失せろと言わんばかりの深紅色。
このまま僕も包まれて死ぬのだろうか、そんなことを直感的に考える。
あ、そういえば授業、終わってるよな。
pcを確認すると会議は勝手に終了している様だった。
まあ、そうだよな。
僕は少しおなかがすいたので冷蔵庫に何があるか確認した。
ああ、何もない。
出てきたのは、少し臭いが変な牛乳と酒、そして腐った玉ねぎ。
まるで私を表しているようなラインナップだ。
あなたはどんな人ですか?という問いには、きっと冷蔵庫の中身で表せると私は思う。
「いえいえ、私の冷蔵庫は汚いですから見ないで」
テレビでよく見るこういう人に限って、小分けのパックで綺麗にしてあると思うのは私だけか。
まず、汚いの意味が違うだろう。
僕のは物理的、彼女達のは「物が沢山あって」汚いということだろう。
現にこの私の冷蔵庫を見て「ああ、本当に汚いですね」
と皆口をそろえて言うに違いない。
あれ、逆か。
物が多いことが汚いということならば私の冷蔵庫はむしろ綺麗なのか?
よくわからないが、僕が買い出しに行かなければならないことは間違いない。
寝すぎてだるくなった体をいなすように伸びをすると、出かける準備をした。
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