青い孤独

珊瑚水瀬

プロローグ

 あ、ピースが足りない。


 私は自分が完成させようとしているジグソーパズルの完成一歩手前でその事実に気づき落胆する。

 白い病室の中でただ完成しそこねた不完全のどこかの異国の写真が、君はどこにも行くことはいけないんだとあざ笑うかのごとくそこに鎮座する。

  すべての色はすべてうわべだけで張りぼてのように感じた。


 ……ここは、息がつまる。

 人間でいることはもっと自由で良いので良いじゃないのかな。

 こんなのあなたらしくないじゃないといつかの私が言う。

 ああ、その通りだ。私らしくない。

 いつも生きているふりをしているだけの抜け殻のように感じる。

 窓から吹く冷たい風に底冷えをした私は体温でぬるくなった息をふーっと手に吹きかける。

 まるで白い息が一つの希望の様に少し現れ、ふっと消える。

 私はこの息と一緒だな。


 自分の何かを誰かに明け渡すことが出来なかった。

 誰かの「愛している」は私に少しの罪悪感とナイフで刺されたかのような鋭い痛みを私に生じさせた。

 きっとその愛は、あなたをつぶしていく愛に変わることは初めからわかり切っていたから。

 大声で何かを言って人に知らせる文化はもう疲れた。


 ふーっと大きく息を吸った。

 そのまま、さざ波の音を聞く。川が近い。そしてそれは私にとってすごく冷たい。

 もうすぐ私の玉の緒も切れることがその刹那直感する。

 生きていけるのだろうかと一瞬のきらめきを放った光はすぐ色を消す。

 私の見た空は青い、きっと青かったはずなのに。

 一つ心を落としたように微笑む私は必要なのだろうか。

 うらやましい反面憎くもあった。この世界に平然と生を許された側の人間のことが。


 彼らは子を作り人と一緒に生活し、幸せとも取れる生活を謳歌してゆくのだろう。

私には程遠い幸せを手に入れていくのだろう。


 頑張っても何にすがっても得られない。

 この不幸がある限り私は誰にも誰にも愛されないのだろう。

 そんなのもうわかっている。

分かりっていることであるのにどうして涙が止まらないのだろう。

 気持ち悪い。何かを吐き出したくても吐き出せないこの状況だけが根無し草の様にとどまる。

 少しでも風が吹いたらしなげてしまうそんな世界で。

 ははっ、息ができない。

 やっぱり、この世界は私にとって息がつまる。

 私はなぜこんな体なのだろう。

 どうして普通と違うのだろう。


 私はきっとそんな疑問を解消するためにこの世界にへ降り立ったのだろう?

 普通との相違とは何かを探し求めるがために。

 私は思う。そう思って自分を慰めるしかなかった。

 ただ、ただね、やりたいことがまだあるの。

 私は、自分の命を燃え尽きることが分かりながら、最後の作戦を実行することにした。

 

 

 

 

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る