第62話 メッセージ
「これに佐藤さんが……」
「根拠としては佐藤みなみが一人じゃなく、側近の様な男を側に置いていたから。口調からして佐藤みなみを崇めている様に俺には見えた」
「男の人……。もしかしてみなみちゃんがその人に洗脳されているとか……。そうなら早くみなみちゃんを助けに行かないと!」
拓海がその派閥に佐藤さんが加わっている根拠を話すと、クロは急に立ち上がった。
「クロちゃんの様子からしてそうなるだろうとは思ったわ。まぁ私達だけでも乗り込もうとは思っていたけど。飯村君も今回は一緒に戦ってくれるわよね?」
「あんまり共闘ってのは好きじゃないんだが……状況が状況だからな」
「助かるわ。一応『ファースト』のメンバーの一部が既に周りの状況を確認して侵入経路を整えてくれてるはずだから直ぐに向かいましょう――」
――ピコン。
クロに続いて俺達も立ち上がると、点けっぱなしだったゲーム画面に新着のメッセージが映し出された。
-------------------------------------
久しぶりクロちゃん、飯村さん。
2人のお陰で私はとっても大きな力を手に入れる事が出来た。
仲間も信じられない程出来て……。本当に感謝しているわ。
自分で作った『ダンジョン』はまだまだ小さいけど、これから既存のダンジョンと合わせてモンスターの居る世界を作る為の足掛かりになるはず。
これからはゲームのような世界、それに順応できる人たちが有利な世界に変わっていく。そう、最高の世界に。
だけどそれを邪魔しようとする人達がいっぱいいてね。仲間達はそいつらを殺そうって言ってるの。
でも私にとって2人は特別。私の、私達の思想に共感してくれるなら2人だけは殺さないであげる。
ねえ、クロちゃん、飯村さん、私達の仲間にならない?
-------------------------------------
「みなみちゃん……。仲間にならない。私はおかしくなっちゃったみなみちゃんを助けてあげるの」
クロはそのメッセージをを読み上げた後ぽつりと呟き、メッセージを返した。
すると……
「――もしもしお疲れ様。どうそっちの様子は?」
『それが遺跡からモンスターが大量に湧き出して、正常化反対派の奴が……。とにかく俺達は近隣の人達を避難させる! 悪いが侵入経路の確保は不可能になったと思ってくれ! 探索者窓口にもこの事は伝えて、後警察にも連絡を頼む!』
「え? ちょっ、モンスターって……。切れちゃったわ」
朱音の元に掛かってきた電話から漏れ出た音声が部屋に響き、その内容は俺達にも伝わった。
どうやらクロの返信を受けて、本格的に行動に移ったらしい。
それにしてもダンジョンを作り出すスキルって……そんなのチート職業って言っても過言じゃないな。
「まずいな。俺は一先ず探索者ビルに向か――」
「だったら私の『ワープゲート』を使ってください! それに向こうの居る場所が『ダンジョン』になってるなら……『ダンジョン』から『ダンジョン』へのワープが出来るかもしれませ――」
「が、あ……」
拓海が玄関に向かおうとするのを止めるクロ。
急に場が騒がしくなり始めたと感じ始めたその時、俺の耳に聞き覚えのある鳴き声が。
「もしかすると向こうは私の作った『ワープゲート』の位置を把握出来るのかもしれません。それにここに『モンスター』を送り込むという事は『ワープゲート』を操作出来るのかも。とにかく、この『ワープゲート』の出口だけを封鎖します。向こう側に移動しましょう!」
「分かった。魔力弓、魔力消費5。魔力矢、魔力消費5。変換吸収の矢」
俺は家の『ワープゲート』から姿を現わしたであろうモンスター、コボルトの脳天を魔力矢で打ち抜くと早速拓海、朱音、クロと共に『ワープゲート』を抜けたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。