第50話 今のは俺だ
「鱗粉は消えたが、孵化したパラサイトワームはまだまだいるんだぞ!」
「すまんすまん。だが、もうこの階層には移動してこない。って事はこいつらを排除してしまえば取り敢えず安全ってわけだよな」
「まぁそうだが、この数はアダマンタイトクラスでも骨が折れ――」
「防御壁があるなら……変換吸収の矢を使わないって方法でいくか。『厄憶蝶』を倒した分の魔力もそろそろこっちまで届くだろうし、魔力回復しなくても大丈夫だろうからな」
俺は久々に変換吸収の矢を解除して通常の魔力矢を転移弓を用いてパラサイトワームに向けて放った。
防御スキルを回避しながら攻撃できるのもこの転移弓のいいところだな。
――ドパッッン!!!
「あ、そういえば今の魔力弓威力高いんだった」
1匹のパラサイトワームに当たった矢。
それは今まで以上の轟音を奏で、更にパラサイトワームの身体をこれでもかと細かく散らし飛ばした。
ステータスポイントボーナスにより、強化された会心の一撃による追加効果で広がる衝撃波も魔力弓に込めた魔力分ダメージが乗り、衝撃波を受けた連中も今まで以上に派手に散る。
「な、なんだよ、これ……」
拓海がそう呟くのは仕方がない事だ。
――俺が放ったのはたった一矢。
それなのにこの階層を埋め尽くそうとするモンスター達は一瞬で全て絶命してしまったのだから。
「一也さん、この階層にはまだパラサイトワームが蔓延ってます。それも一気に片付けちゃいましょう! 今から映像を出しますね! それとここの魔石の回収は私に任せてください! これまでの失態の分私、頑張ります!」
クロは自信有り気に新たに映像を映し出す。
その数は全部で10。しかも全てしっかりとパラサイトワームを捉えている。
一部力の解放がされたというのはこの事なのだろう。
「10階層分すべて表示されてます! 今の私は正常化されてる階層内なら際限なく映像を出せますよ!」
「凄いな……」
「へへ……。後はお願いします!!」
「了解した」
俺は強化された転移弓を使って各階層に矢を飛ばす。
魔力弓による反動はあるものの、拓海の防御スキルがクッションになり、連続で放てる。
「は、はは……。俺がクッション役にしかならないのかよ」
各階層で豪快にはじけ飛ぶパラサイトワーム。
ターゲットの設定からもパラサイトワームは消え、今いる分のパラサイトワームはこれですべて処理出来た事になるのかな。
一応寄生して生き残ってる個体なんかもまだいる可能性があるから、その辺りの状況を見ながら11階層~20階層の探索を開始した方がいいと江崎さんに進言しておこう。
「――『マグネットフォース【魔石】』」
拓海と俺がスキルを解除してふっと息をつくと、クロが見た事の無いスキルを発動させる。
すると辺りに散らばる魔石が一箇所に集まり、1つの塊へと姿を変える。
【極大】、いやこれは3倍くらいの大きさはあるか。
「はぁはぁはぁ……。ふぅ、疲れました」
「ああ、お疲れ様。体に異常はないか? 記憶に干渉されたんだろ?」
「はい。でもその時、すっごく苦しかったっていう事は分かるっていう程度で他は何も。あ、あと身体の異常って言えば――」
――ぐぅぅぅぅ。
「またかクロ」
「いや、今のは俺だ。そんなでかい魔石を拾ったんだ、今日くらい奢ってくれるんだろうな?」
「助けてやったくせに……。まぁ、断る理由もないか」
「ふふ、そうしたら直ぐにワープゲートを出します。力が解放されたからか、直ぐに出せますよ。あーお腹空いたあ!」
緊迫した空気から一転、俺達はそれぞれ顔を見合わせて笑みを溢すのだった。
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