第19話 新規記載

 慌てて石だの槍だのを適当に投げつけて来る『ロードコボルト』達。

 巨大な槍で勝負が決したと思い行動が1テンポ遅れた事で、同じものを生み出す余裕はもはやない。



 ――パンパンパンッ!



 石や槍を各魔力の矢は2つに分裂しながら撃ち落とし、各々衝撃波を生み出す。

 『ロードコボルト』までの道は開け、後続の矢は次々と『ロードコボルト』の元へ。


 そして



 ――パンッ!



 遂に矢が『ロードコボルト』の右腕を爆散させた。

 『ロードコボルト』は情けなく喚いたが、HP自体はまだ残っているらしく衝撃波によって横にいるもう1匹の『ロードコボルト』は体をぐらつかせるだけで、痛みを感じている様子はない。


 流石に耐久力が特徴と言われているだけあるが、それでも今の俺の手数の多さに耐えれるわけはない。


「魔力5消費」


 俺は『ロードコボルト』から得た魔力で更に矢を追加して弓を引いた。

 『ロードコボルト』にもう何かを投げつけるなどという隙はない。

 形勢は逆転。『ロードコボルト』の体の部位をHPが無くなるまで、根性も発動して完全に沈黙するまで矢はその動きを止めない。


 幾重にも重なる会心、衝撃波、吸収の赤いエフェクト達と部位の爆ぜる音がまるで花火大会のそれの様な盛り上がりを見せ、それが終わるとその場には極大の魔石が2つだけ残っていた。


『レベルが92に上がりました。ステータスポイントを4取得しました』

『……ステータス』


 俺は『ロードコボルト』達を倒した余韻に浸りながら会心威力にステータスポイントを振る為にステータス画面を開いた。


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名前:飯村一也

職業:弓使い(残り58レベルで弓使い【魔弓】或いは弓使い【属性弓】に職業進化)

年齢:28

レベル:92

HP:130/164

魔力総量:97

攻撃力:278

魔法攻撃力:70

防御力:144

魔法防御力:144

会心威力:12400%

スキル:必中会心、変換吸収の矢、魔力矢(現職業最大強化済み。職業によって派生有り)

ステータスポイント:0

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 今まで記載のなかった職業進化の文字がしっかりと刻まれている。

 剣士や魔法使い等の職業は進化の回数が多くレベル50までに2回、それ以降も50レベル事に進化出来るらしいが……なるほど、弓使いは150レベルで進化か。

 弓使いの探索者がそもそも進化の条件を見る事が出来るまでレベルを上げたという事例が無かった為確認出来ず、弓使いは進化できない職業と思われていたが……。


「大器晩成型ってやつか」


 最初からこれが分かっていたらもう少し高いモチベーションで10年間レベル上げをする事が……いや、それはないな。

 競馬と探索にたらればは厳禁。


 俺はそんな事を考えながらステータス画面を閉じると今度は黙々と魔石を捧げる。


 今回はダースウルフェンによってコボルト達が進化してくれたお蔭で魔石の質が高い。

 特に『ロードコボルト』の落とした魔石は『ボーパルバニー』よりも大きく、表記が『ロードコボルトの魔石【極大A評価】』とされていた。

 値段にしていくらになるのか1個持って帰りたいところだが、クロが俺の様子を確認している事が分かったからそれは気が引けてしまう。


「これで最後か――」

『ありがとうございます。改めて私はクロと申します。完全復活まではまだ魔力が必要ですが、言葉は自由に、時間の制限も困らない程になりました。直接お礼をさせて頂きたいので、ワープゲートを今そちらに』


 2個目の極大魔石を捧げるとクロの声が頭に流れて、俺の目の前に虹色のエフェクトが。

 サイズはトイレの個室扉程。直接見た事はないが、確か50階層、100階層のワープゲートもこんな特徴があるとか……。


『身体に害はありません。安心してください』


 クロはあの時俺の窮地を救ってくれた存在。きっと大丈夫なはずだ。


「……分かった」


 俺は恐る恐るそれに手を潜らせた。

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