第6話 二日酔いの昼

「頭いてぇ……。しっかり飲んだのなんていつ以来だ?」


 家に着いてから動画配信を眺めながらの1人飲み会を開催。

 睡魔に襲われていつの間に寝てしまう程深酒をしてしまった所為で2日酔いが酷い。


 今日はもうダンジョンには行けないな。

 そもそもこの10年間どれだけ短い時間でもダンジョンに侵入する事を忘れなかったから今日くらいはゆっくりしても罰は当たらないだろ。


「時間は……昼前か。良く寝たな」


 テーブル兼炬燵の中から体を起こすと、スマホを片手に冷蔵庫に手をかける。

 キンキンに冷えたミネラルウォーターの蓋を外し、流し込むと頭がすっきりしたような気になる。

 ただ今日はもう外に出る気がしない。


「なんか面白いゲーム配信でもやってないかな?」


 スマホを操作しながらさっきまで寝ていた場所に戻る。

 こうやって暇な時間になると動画配信以外趣味らしいものがない事にハッとするな。

 高卒で探索者っていう職に就いたから気付く機会が無かったが、俺って実は引き籠り気質がなのかもしれない。


「――この動画群、やっぱり話題になってるか」


 『ダンジョンに異変、探索者業終了のお知らせ』、『死亡者続出! 絶対ダンジョンに行くな!』、『潜入! 探索者ビル!』

 ゴシップ系の投稿者やテレビ局公式のチャンネルによるダンジョン特集動画が急上昇の上位にいくつも入っている。

 ゲーム実況の気分だけど、ちょっと覗いてみるか。


『――ダンジョンの入り口がある地下フロアに行く階段にはマスコミ対策として柵が張られ、エレベーターも探索者とそれに関係する人以外は利用が禁止されている状況です。SNS上では知り合いの探索者が帰ってこない、探索者窓口の人から電話が掛かってきた等報告が相次いでいます。これについて探索者窓口の運営に関わるダンジョン省は公式サイトにて警告文、改めてダンジョンで重傷、死亡してしまった場合の責任についての説明文を掲載しています』

「上は批判対策に必死か……。これを機にあのバカ高い武器とか防具の値下げとかすればいいのに――」

「探索者ギルド『ファースト』の代表である姫川朱音さんは、自分のギルドの仲間でさえ帰還が出来ていないと発表。未だにダンジョンへ侵入する低レベル探索者達を牽制している状況です。更には自分ですら倒せないモンスターがいるとSNS上で呟いた事が話題になっています。一部では10年間レベル上げを怠ってきたのでは? と炎上を起そうとするアンチも現れています」


 朱音が勝てないモンスター?

 俺が知っている限りでは朱音は探索者の中でも5本の指に入る実力者だった筈。

 それがこんな発言なんて……あの後朱音の身に何が? それに帰って来ないのって拓海の事か?

 まあ、あいつに関してはまだ潜って1日しか経ってないから何かあったっていう風に判断するのは早いと思うが。


「ダンジョンの異変に混乱する探索者達ですが、その異変は私達にも及んでいます。なんと探索者ビル付近に住む人達が今までダンジョンに潜らない限り得られなかったステータスを取得し始めたのです。更には探索者が地上で一部のスキルを使用する事が出来るように、地上でのステータスの確認は全員が可能だそうです。魔石の買取量が減れば電気代、水道代が高くなると焦っている人がいるでしょうが、探索者によるスキル犯罪の方が早い段階で問題となるでしょう」

「外でスキルが使える? マジでか?」


 どんなスキルが使えるのかにもよるがそれはまずい。

 探索者は面接があったり選ばれた人達であるわけではない。

 はっきりいって人柄はピンキリ。

 早く対策を練らないと、大変な事になるぞ。


「しかも全員ステータス確認も出来るのか……試してみよ」


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名前:飯村一也(いいむらかずや)

職業:弓使い

年齢:28

レベル:35

HP:50/50

魔力総量:10

攻撃力:50

魔法攻撃力:13

防御力:30

魔法防御力:30

会心威力:2500%

スキル:必中会心

ステータスポイント:10

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ステータスポイントは又全部りす――


 ――ブィー。


 ステータスポイントを振ろうとした時、スマホに通知が。

 差出人は探索者窓口。


『ダンジョン入り口からモンスターが現れました。お近くにお住いの方は早急に討伐へ向かっていただけると助かります』

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