第30話 セナの秘密

「地球人じゃない?」

「そうよ。あなたたちの言う地球人じゃない。でも人間である事は間違いないわ」

「宇宙人なのか?」

「その言い方は好きじゃないわ。あなたたちの概念で言うなら、裏宇宙の住人よ」

「裏宇宙だと? 何故ここにいる? いや、俺たちの敵なのだからそうなのか。俺たちは裏宇宙からの侵入者を撃破するために戦っているんだから」


 俺の言葉に頷きながらも、怪しい笑みを絶やさないセナだ。


「あらー。そんな事を信じてるのね。でもそれは嘘なの」

「嘘だと?」

「そう。我が故郷を守るため、裏宇宙からの侵入者を阻止せよ。アルス防衛隊への勧誘時に語られる常套句じゃないの。私も同じ言葉を聞いてここに来た」

「そうなのか?」

「そう。でも私は戦闘員じゃないの。諜報関係」

「諜報……スパイって事か?」

「そうね。でも私の目的は敵方の情報収集じゃないの」


 まさか。セナの目的とは、このアルスの情報収集なのか?


「それはここ、異界アルスの情報なのか?」

「そうよ。それであなたは何か知ってるの?」

「いや、謎だらけで何の事か分からないんだが、その取っ掛かりが少しだけ見えた気がする」

「ふーん」


 素っ気ない返事だ。

 しかし、少し冷静に考えるならこの世界は謎に満ちている。それは、無限に供給されているのではないかという兵器と戦闘員。何機でも何人でも、損害は極めて短期間に補充される。俺は空軍関係しか見ていないが、戦車などの地上車両も同様だと聞いた。他の戦域、例えば海上であれば、艦船と航空母艦とそれに搭載された航空機も同様なのだろう。

 そしてもう一つ謎であるのが、ある一定期間の機体、即ち、第二次世界大戦期の機体のみが使用されている事だ。ジェット戦闘機も存在しているが、それも大戦期に使用されたメッサーシュミットMe262やグロスターミーティアなどに限られる。戦後の第二世代以降のジェット戦闘機、例えばF15イーグルやF22ラプターなどの新しい機体は使用できない。いや、そもそも銀河規模で戦闘員を募集しているなら、使用する兵器も銀河規模で徴集していても不思議ではない。つまり、俺たちが見たことも無い戦闘機、技術レベルが地球のレベルを遥かに超えているものがあっても不思議ではない。レーザービームであるとか、本当に光学的に見えなくなるようなステルス性を備えた機体が存在してもいい。


 しかし、そんなものは見たことも無いし聞いたことも無い。


「ねえねえ。難しい顔して何を考えてるの?」

「いや。何故、使用されている兵器が地球の物ばかりで、しかも大戦期の物だけだというのが不思議なんだ。最初はそういうものだと思っていたんだが、冷静に考えると納得できない」

「そうね。その通り」


 セナはにこりと笑って立ち上がり、俺の右手を掴んだ。


「さあ、難しい事を考えるのは後にしましょう。今は楽しもうよ」


 セナは俺の手を引き、大型のベッドへと誘う。


「何をする気だ?」

「楽しい事よ。あなたは性欲はないの?」

「そんな事はない」

「じゃあ、私の容姿が気に入らないわけ?」

「そうじゃない。俺には心に決めた女性がいるんだ」

「鈴野川女史ね。五式戦のマリカ……食わせ者ね」

「食わせ者だと。彼女の事を知らない癖に勝手な事を言うんじゃない」

「知らないのはあなたの方。彼女はパイロットだけど、立場的には私と同似たようなものよ」

「まさか、マリカがスパイだと?」


 確かに、この世界においてマリカとの出会いは異質だった。最初、彼女はゴーストに化けて俺に接触して来たのだから。そして彼女と出会う事で俺はこの世界の異質な部分に気づかされた。


「そうね。気になるなら自分で確かめてみる事ね。無理でしょうけど」

「無理だと?」

「そうよ。現状わたしたちは、ブラッディオスカーをティターニアに帰すつもりはない」


 そうだった。俺は帰れない。マリカには会えない。


「そんな寂しそうな顔をしないの。私と楽しみましょ」


 セナに手を引かれそのままベッドに倒れ込む。俺がセナの華奢な体に覆いかぶさるような格好になった。彼女は俺のシャツのボタンに手をかけ一つづつ外していく。そしてシャツの内側に手を入れ、俺の胸を撫でる。


「ねえ。興奮してる?」

「いきなりそんな気分になる訳ないだろう。それに君は俺の好みのタイプじゃない」

「そんな事を言うんだ。失礼しちゃうなあ」

「失礼なのか。初対面の女性が好みのタイプである可能性なんてたかが知れているだろう」

「なるほどねえ。鈴野川女史はあなたの恋人。彼女の体は隅々まで知り尽くしてる」

「君には関係ない」

「冷たいわね。私みたいな貧乳は好みじゃないって顔にいてあるわ」

「……」


 言われてみればその通りかもしれない。マリカの浅黒い肌と豊かな胸元が俺の中枢を限りなく刺激していたのは事実だ。

 セナは俺のシャツを下から器用に脱がせ、俺の乳首を口に含んだ。


「うっ」

「感じて来た?」

「……」


 図星だ。セナは何も言えなくなった俺と体を入れ換え俺の腹の上に馬乗りになった。そして自分もパーカーを脱ぐ。


 透き通るような白い肌と淡いピンク色のブラジャーが眩しすぎる。ただし、それには厚みがない。うすうす気づいていたが、彼女の胸元は本当に膨らみに乏しかった。


 両手を背にやりそのブラを外しながら、セナが口を開く。


「好みの大きさはどのくらいなの?」

「何の事だ?」

「胸よ」


 咄嗟に思い出したのがマリカの胸だった。アレは確かFカップだったはずだ。


「Fねえ。ブラッディオスカーは巨乳好きなんだね」


 俺の思考が読まれているのか? セナはニヤリと笑い深呼吸をする。そして両腕を天井へと向けて突き出し下に降ろした。


 するとどうだろうか? AA、即ちほとんど膨らみが無かった彼女の胸が徐々に膨らんでいき、美乳から豊乳へと変化した。


「多分、これでEカップね。もう少し大きくした方がいい? この位の大きさの方が揉んだりしゃぶったりしやすいと思うの。変に垂れたりしないから見た目も綺麗じゃないかしら」


 セナの言葉に俺は言葉を失う。しかし、俺の視線はセナの胸に釘付けとなり、体の芯は熱く燃え上がってしまった。

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