第34話 邪魔力
自警団を作る為の面接が始まった。
どんな人が自警団にふさわしいかなんて分からないから。
ほとんどサウンさんに任せてる。
ただ、株価をチェックして、低すぎる人は弾いたわ。
「自警団をまとめる事になったフィツムです。よろしくお願いします」
フィツムという人が挨拶にきた。
この人はサウンさんがイチオシしてた人だわ。
この人が自警団の団長をやるのね。
「よろしくね。怪我がないようにお願いするわ」
「はい、心得ました」
自警団に大きな権限などはない。
犯罪を見つけたら、警備兵に突き出す事しかできない。
一応、緊急逮捕権はあるようだけど、逮捕するのに怪我を負わせたら問題になるみたい。
正当防衛は認められているけどね。
これで、自警団は問題ないでしょ。
問題はハオルチア王子とヒロインの橋渡しだけど、身分が釣り合わない事が一番の問題だわ。
平民に爵位を与えるには功績がないといけない。
これは最低条件。
最終的には侯爵ぐらいの養女にしないと。
うーん、無理ね。
魔力が増えたのだから、魔術の練習でもして気晴らしでもしようかな。
火よ灯れ。
嘘、呪文を唱えてないのに、火が点いた。
消えろ。
消えたわね。
もしかして、私って魔術の天才?
詠唱もやってみましょう。
「【ウインド、魔力よ風になれ】」
あれっ、魔石の触媒がないのに風が起こったわ。
私って、やっぱり天才?
でも、魔力は何もしなくても減っていく一方なのよね。
天才だったとしても、宝の持ち腐れだわ。
サウンさんが血相を変えて、私の部屋に飛び込んで来た。
「敵襲か!? 魔術の気配がしたんだが」
「魔術の練習をしてたの」
「体に異常はないか! 独学の魔術は危険なんだぞ」
サウンさんは私のおでこに手を置いて熱を測った。
むっ、魔力が増えたような。
「ステータス。やっぱり増えている。何でかしら。私にサウンさんから魔力が流れ込んでいるみたい」
「ステータス。俺の魔力は減ってないな」
サウンさんは減ってないのに、私の方は増える。
どう考えたらいいのかしら。
「手を握ってみてくれない」
「こうか」
やっぱり、サウンさんに触られると魔力が増える。
考えられるのは私に聖魔力が宿ったという事ね。
何でかな。
ヒロインが目覚めない物だから、代わりに私が。
まさかだわ。
聖魔力は作る力だから、触媒無しでも魔術は使える。
サウンさんに触れていると、聖魔力が作用して魔力が作られる?
説明は合うわね。
でも何か違うような気も。
実験してみないと。
ヒロインの聖魔力を目覚めさせられないかしら。
聖魔力があれば可能な気もする。
私はヒロインのトゥレアに手紙を書いた。
二人だけで喫茶店で会う事にしたわ。
喫茶店は女の子達で溢れていて、ヒロインは私より先に来ていた。
「遅い」
「ごめんなさい」
「とりあえずは挨拶は良いわ。早く橋渡しの為になる画期的な方法をやってみて」
「では」
私は両手を組んで目をつぶり、ヒロインの聖魔力が目覚めるのを祈った。
「いつまで待たせるのよ。何にも起きないんだけど。あなたってグズね。祈るって、聖女にでもなったつもり。祈りを奉げてなんとかなるんだったら、私は今頃、逆ハーよ」
駄目みたい。
でも、何でグズ扱いされないといけないの。
腹が立ってきたわ。
これもヒロインの逆ハー狙いが原因。
そんな物消えてしまえ。
「嘘っ、聖魔力が芽生えたわ。ありがと、あなたってやれば出来るのね。でもあなた聖女でなくて悪役令嬢よ。あなたの中にある邪魔力を感じるわ」
私は驚愕のあまり呆然と立ち尽くした。
えっ、私の力は邪魔力なの。
私は邪神になっちゃうの。
助けてサウンさん。
喫茶店の外にいたサウンさんが飛び込んできた。
泣きそうな私を見ると、抱きしめてくれた。
「ラメレイに何をした?」
「真実を告げただけよ。ラメレイはいずれ邪神になるかもね。もっとも、私がやっつけちゃうけど」
「ラメレイは邪神になんかならない!」
サウンさんの怒声。
私は抱きしめているサウンさんをそっと押しやり、離れた
「ラメレイ」
「ごめん、今は一人にさせて」
私は喫茶店を出てラメレイ商会に向かって、とぼとぼと歩き始めた。
邪魔力が私の中にある。
ヒロインが嘘をついた。
何の為に?
あの子は演技なんて出来ない。
表裏がない馬鹿な子だから、あの言葉は真実だと思う。
物語の強制力って事。
嫌よ。
ラスボスになって殺されるのは嫌。
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