第30話 不安
Side:サウンデル
遅いな。
頭を冷やすと出て行ったラメレイが帰って来ない。
また、暴れ馬のように、はちゃめちゃな事をしているのに違いない。
少し心配になった。
冒険者ギルドを出て少し歩くと見覚えのある布の切れ端が、あれはラメレイに貰ったハンカチと同じだ。
切れ端を手に取ってみると、ソースが付いていた。
これはラメレイのに違いない。
汚れたから捨てたというわけではないだろう。
わざわざ千切る必要などない。
もしかして、さらわれたのか。
このままではドルスに顔向けが出来ない。
俺は警備兵の詰め所に駆け付けた。
「女性がさらわれた。手を貸してほしい」
「我々にも仕事があります。さらわれたという証拠は?」
「責任者を出せ」
俺は紋章の付いた短剣を見せた。
「はっ、これは。王家の紋章。王家のゆかりの方でしたか。ただいま責任者を呼んできます」
責任者に説明をして、ハンカチの切れ端が他にもないか、探してもらう事にした。
発見の報告が次々に入る。
俺は地図にそれを記した。
切れ端のあった所を線で結ぶ。
線はある地点で途切れた。
「ここには何がある?」
「倉庫が立ち並ぶ一角です。使われていない倉庫もあり、浮浪者やごろつきが潜んでいる事があります」
「案内を頼めるか」
俺は現場に行って一つずつ倉庫を調べた。
駄目なのか。
ここで手掛かりはが途絶えたのは偶然か。
ある倉庫の扉を叩くと、人相の良くない男が現れた。
「黒い物を見なかったか? ちらっとここに運び込まれるのを見たんだが」
「黒髪の女なんか知らない」
「俺は黒い物と言ったんだ。何で女だと分かった」
「くそう」
俺は鞘の付いた剣で男を殴った。
倉庫に踏み込む。
ラメレイ無事でいてくれ。
男が二人現れる。
「お前は、ラメレイの護衛」
「遠慮は要らないようだな」
俺は一撃ずつ入れて方をつけた。
ラメレイは。
奥へ行くとラメレイがいた。
眠っているようだ。
着衣の乱れもない。
ほっと、息を吐く。
「おい、起きろ。ねぼすけにも程があるぞ」
俺はラメレイをやさしく揺すった。
ラメレイは寝返り一つ打たない。
おかしい。
脈をとる。
脈がゆっくり過ぎる。
まるで死にかかっているようだ。
「頼む。目を覚ましてくれ」
俺はラメレイを揺さぶった。
「倒された男達以外の人間はいませんでした」
「やつらの処分は任せる。それより医者だ。誘拐された女性の意識が戻らない」
「分かりました。すぐに手配します。女性は近くの宿にでも移しましょう」
「そうだな。ここには、置いておけない」
ラメレイをお姫様だっこして宿まで運ぶ。
案内された宿のベッドの上にやさしくラメレイを寝かせた。
見ていると今にも起き上がって口を開きそうだ。
自分に対するイライラがつのる。
頭を冷やすといった時に無理を言ってついて行けば良かった。
俺は宿屋の従業員に金を握らすとドルスへの伝言を頼んだ。
医者はまだか?
まだなのか?
しばらく経って現れたのはドルスだった。
「ラメレイが大変なんだって! なんで目を離した?」
「すまん。俺のミスだ」
「言い過ぎた。僕がついていても結果は同じだっただろう。ラメレイの手を握ってやれよ。病人は意識がなくても分かっているものさ」
「そうだな」
俺は早く目が覚めてくれと祈りながら手を握った。
「はぁはぁ、年寄りを労わらんか」
医者が到着したらしい。
「じいさん見てくれ」
「うむ」
あちこち触って診察を下した。
「薬が使われとる。薬の種類が分かれば、回復も早いじゃろ」
「分かった薬の種類だな」
あの男達を締め上げて吐かせてやる。
「大変です。男達が自害しました」
警備兵の一人が報告にきた。
くそう。
まだ手がないか。
「落ち着けよ」
「ドルス、何か案があるのか」
「倉庫を調べるんだ。手掛かりがあるとすればそこだろ。お前はここにいろよ。僕が行って来る」
「頼んだぞ」
ドルスが手掛かりを探しに出て行った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます