第4章 誘拐編
第27話 買収話
「ちょっと、お時間を頂いてもよろしいですか」
街角でハンサムな男の人に声を掛けられた。
ちょい悪って感じだけど物腰は柔らかい。
この世界は本当に美形率が高いわね。
「今、忙しいんです」
勧誘のたぐいは断る事にしている。
相手にする時間が勿体ない。
「ちょっとぐらい良いですよね」
しつこいわね。
「押し売り? 宗教? セミナー? 教材? 全て間に合ってます」
「いや、商売の話なんだけどね。ちょっと、待って」
「しつこいと警備兵、呼びますよ。サウンさん、行きましょ」
勧誘男を走って振り切った。
ラメレイ商会の店舗に入って一息つく。
久しぶりに全力で走ったような気がする。
「ひどいじゃないか」
みるとあの勧誘男が来ていた。
追いかけてきたのね。
サウンさんが戦闘態勢に入る。
サウンさんに叩き出してもらう前に話を聞いてあげましょう。
ここまで追いかけて来た努力賞よ。
「話があるなら、早く話して」
「ラメレイ商会を売らないかという提案なんだ」
買収の話だったのね。
「お断りします」
「後悔するよ。私の商会に楯突いた商売敵はみな潰れました。どうです、今からでも遅くありません。考え直してはどうですか」
「しつこいですね。お断りします。サウンさん、帰らないようだったら、叩き出して」
「おう」
「今日は帰りますよ」
気になったので、株価チェック
―――――――――――――――――――――――――――――
名前 レベル 現在値 安値 高値
キルタンサス LV18 5078A 4961A 5078A
―――――――――――――――――――――――――――――
意外に高いのね。
キルタンサスの名前は憶えておきましょ。
株価チェックは名前を突きとめるのにも使える。
名前と株価しか分からないけど、おおよそのその人の地位みたいな物が分かる。
商業ギルドのロビーは清潔で埃一つ落ちてない。
前世の銀行を思い起こさせる。
カウンターの前に行き用件を告げる事にした。
「キルタンサスという人が所属している商会の資料がほしいわ」
「はい、ただいまお調べします。椅子に掛けてお待ちください」
椅子に座って待っていると名前を呼ばれた。
資料を受け取って目を通す。
ええと、スピラリス商会所属で、会頭の息子なのね。
スピラリス商会は商業ギルドに加盟してない。
ふーん、なぜかしら。
商売敵の隊商が盗賊に襲われたり、商売敵の店に泥棒が入ったりとにかく黒い噂があるようね。
要注意と書かれていた。
今まで証拠が何一つ上がってないので、捜査の手が伸びていない。
犯罪組織みたいだわ。
私の商会には商品はないし、店もあの店舗だけで、金目の物は置いてない。
襲われる危険性はないみたいだけど、念には念よね。
冒険者ギルドは、商業ギルドとは打って変わって、汚くて騒がしいそんな場所。
例えるならブラック派遣会社かな。
「警備の人を雇いたいんだけど」
「ご予算はどれぐらいで、日数と人数はいかほどですか?」
「予算は金貨10枚で、期間はそうね、一週間でいいわ。人数は1パーティ」
「この条件ならすぐに依頼を受けると思いますよ」
「酒場で待たせてもらうわ」
「決まりましたら。そのパーティを向かわせます」
冒険者ギルドの酒場のテーブルに着いた。
安酒場って言葉がこれほど似合う場所もないわね。
料理は安い早い大盛りってところ。
私はお茶を注文した。
しばらく経って、冒険者パーティがやってきた。
「Cランクパーティの雷撃の鉄槌だ」
「私の商会を警備して頂戴。店に金目の物はほとんどないから、盗みに入られてもとやかくは言わないわ。でも私の住居には絶対に賊を入れないで」
「了解した」
これで、警備は大丈夫のはずよね。
1週間で何とか方をつけないと。
私は、顔見知りの冒険者を集めた。
そして、スピラリス商会の黒い噂を広めてくれるように頼んだ。
こうしておけば焦れて尻尾を出すでしょう。
証拠さえつかめば、後はどうとでもできる。
今日ほど貴族階級で良かったと思った事はないわね。
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