第24話 レベル上げ
「サウン先生、魔術が使いたいです」
「急にどうしたんだ」
「魔石の勉強をしたので、魔術が使いたいです」
「魔力が3しかないと言っていたな。じゃあレベル上げだな。レベルを上げれば魔力は増える」
「あいあいさー」
あー、恥ずかしい。
冗談でも言ってないとサウンさんの顔がまともに見れない。
サウンさんにハンカチの件は忘れてって言ってみようかしら。
それじゃ、嫌いって言うようなものじゃない。
駄目よ。
あれは義理ハンカチ。
そう思い込むしかないわ。
草原に行って罠を仕掛ける。
角兎を狩るためよ。
罠は高いから駆け出し冒険者は使わない。
貴族がレベル上げする時の手段なんだそうだ。
罠に掛かった角兎を前にナイフを構える。
駄目。
殺せない。
無理よ。
生き物を殺すなんて。
でも殺さないとレベルが上がらない。
「どうした、やらないのか」
「生き物を殺すのが嫌なのよ」
「まあ、貴族の令嬢だから仕方ない。予言者の彼女は嬉々としてモンスターを狩っていたらしいが、あっちは平民だからな」
二人とも中身は平民なんですけど。
「デスバタフライなら殺せるかも」
虫を殺すのはわりと平気な方。
ゴキブリだって殺せるわ。
殺虫剤があればだけど。
デスバタフライ用にテニスラケットみたいな武器を作ってもらった。
これでビシバシいくわよ。
デスバタフライの狩りは上手くいった。
そして。
――――――――――――――――――
名前:ラメレイ・パキポディ LV5
魔力:3/3
スキル:株
――――――――――――――――――
のおー、魔力上がってないじゃない。
どういう事。
才能がないって事。
ちょっと神様。
お金あげますから、魔力を頂戴。
「サウンさん、私、魔力が増えない体質らしいです」
「不思議だな。だが、ラメレイらしいと言えば、らしいな」
「でもレベルを上げておいた方がいいですよね」
「そうだな。体力もつくし悪い事はない」
それからレベル8までは頑張ってあげた。
もうデスバタフライでは上がらないようね。
「普通ならゴブリンだが、角兎も殺せないんじゃ、ゴブリンはもっと無理だろう」
「無理だと思います」
「ここで辞めるか?」
ええと、血が出ない、殺した感触の無い物だったら平気かも。
水球で包む魔道具を、作って貰いましょうか。
金ならあるわ。
水球の魔道具を作ってもらった。
さっそく角兎で試験よ。
罠に掛かった角兎に水球を放ってくるむ。
角兎が水球の中で暴れ動かなくなった。
これでも精神的にくる。
悪夢にうなされそう。
これ以上の魔道具は考えつかない。
「生き物じゃなければ、良かったのに」
「早く言えよ。アンデッドは平気か?」
「アンデッドなら大丈夫かも」
棍棒を装備して古戦場に行く。
動く骨のスケルトンが現れる。
こういうのなら平気ね。
ゾンビとかは受け付けないけど。
棍棒でスケルトンを叩いて、頭蓋骨の中の黒い魔石を採る。
たまに霧みたいなゴーストが寄って来るけど聖水を掛ければ溶ける。
聖水は高いけどお金ならいくらでもある。
そして、レベルは12に上がった。
「ここいらのモンスターではこれ以上は無理だな。ウルフとか無理だよな」
「ええ、スピードに翻弄されそうだし、生き物を殺すのは忍びないわ」
「本当に優しいんだな」
「違うわ。自分勝手なだけ。個人的な感傷というか好き嫌いのたぐいだと思う」
「平和な時代ならよかったのにな。あの予言者の女は魔王を予言している。攻めて来るんだろうな」
「そうね。私もそれは確信してる」
「守ってやるよ」
「ありがとう、頼りにしているわ」
レベル上げは12で終わった。
魔王を倒すのだったらこんなのでは全然足りない。
でもどうしようもないのよ。
殺した時の罪悪感がたまらない。
前世では魚だって殺した事がない。
世話を忘れて金魚が死んだけど、その時は泣いたわ。
死というものになれてないの。
ゲームの世界だけど、ゲームではないのだから。
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