第21話 化粧品

 薬師学校で校長先生に話をした。


「畑に合わせたレシピを作るなんて無理だね。いいかい、気候が毎年違うんだ。とうぜん薬草も変わってくる」


 そう、駄目なのね。

 でも、諦めたらそこで終りよ。


「調合を実際に見せてもらっていいですか?」

「飽きるまで見ていっとくれ」


 薬草を潰したり煮たり、混ぜたり、濾したりね。

 ここで問題になっているのは混ぜる分量。

 ここが薬草によって変わるのね。

 日本だったら、たぶん何億もするような機械で分析するでしょうね。


 そうよ。

 分析する物を作ればいい。

 ええと、小学生の時に夏休みの研究で、野菜の汁でリトマス試験紙を作った子がいたわ。

 リトマス試験紙だけでなく、何に反応するのか分からないのも副産物で出来たと。

 これだわ。


「おやっ、何か閃いたようだね」

「ええ、上手く行くかどうか自信はありませんが」


 地球とは野菜が微妙に違う。

 違うという事は面白い試験紙が出来るはずよ。


 色々な野菜の汁で染めた紙を校長先生のところに持ち込んだ。

 試行錯誤の結果、いくつかのポーションでは試験紙が役にたった。


「画期的だね。目に見えるってのがいい」

「これで作れるポーションの種類が増えますよね」

「そうさね、野菜の種類はまだ色々ある。ひとつ、取り寄せてみようじゃないか」


 やった。

 にわか知識が役に立った。

 夏休みの研究も馬鹿に出来ないのね。


 ポーションの増産が出来たので化粧品を作る。

 もちろんポーションを練り込む。


 商品開発なんてやった事がないから、薬師学校の生徒の一人に丸投げよ。

 もちろん株を買ってから、資金を渡した。

 失敗したって別に良い。

 私は、良く効く手荒れクリームとかが欲しかっただけなんだから。


 生徒は手荒れクリームだけでなく化粧品も開発してきた。

 他の生徒も雇ってモニターになってもらい、開発を進めた。


 ものの一週間で商品が出来上がった。

 そりゃそうよね。

 今まである化粧品にポーションを練り込んだだけなんだから。

 ポーションが入った口紅は凄かったわ。


 こんなの前世でも使ってない。

 保湿効果もあるし、ガサガサにならないし。

 こんなのが欲しかったのよ。


 その他白粉とかもポーションが練り込んであるので、肌荒れがない。

 我ながら良い物を作ったわ。


 薬師学校の一角に店を出した。

 連日、大盛況よ。


 そして、なんとヒロインが攻略キャラを引き連れて、買いに来た。


「また、あなたなの。私達が戦闘で苦労している時に化粧品なんか作っちゃって」

「嫌なら買って貰わなくても結構です」


「巫女姫、どう致しました?」

「ここで、買うようにお告げが出ています。戦闘で荒れた肌を治すようにと。神からのご褒美です」


 ヒロインは商品を物色し始めた。


「その、婚約破棄は済まなかった」


 何ですって!

 ハオルチア王子が謝った。

 一体どういう事。


「謝罪を受け入れます」

「良かった。とにかく謝った事を忘れるなよ」


 念を押さなくても。

 たぶん、何かしらの圧力が掛かったのね。

 両親の方から抗議が行ったとかかな。

 ちょっとわからない。


「僕も前に強引に連れて行こうとした事を謝るよ。ごめん」


 そう言ったのは子犬のようなガラムだ。


「謝罪を受け入れるわ。でも女性に手荒な事をしては駄目よ。か弱いんだから」

「うん」


「あなたは近ごろ話題になっているらしいですが、誰がやったのですか。影で操っている人物がいるはずです。どなたですか」


 そう言ったのは、宰相の息子で眼鏡を掛けているオロスタキス。

 うん、話題になっているどこで?

 情報が足りない。

 私が商売にうつつを抜かしている間に何やら事態が進んでいるよう。


「意味が分かりません」

「あなたがやった事が元で税収が10%近く上がったのです。女性に出来る事とは思えません」

「冒険者を支援して、薬師を育成しただけよ」


「冒険者がモンスターの素材を沢山採取すれば、経済が回ります。それにモンスターの被害が少なくなれば、行き来も盛んになり商売も活発に。ポーションの増産もそうです。安くなって需要が生まれれば経済が回ります。いったい誰の施策です」


 冒険者の治療はやり過ぎた感はある。

 1万人以上治療したからね。

 だって、噂を聞いて、怪我をした冒険者が遠方から押し掛けたんだもん。

 私は悪くない。


 おかげさまで総資産は2千億Aを超えた。

 実は実家の領地を支援は始めている。

 お金は湯水のようにつぎ込んだ。


 つぎ込んだお金はインフラに使っているらしい。

 それで領地も景気が良くなったようだ。

 株スキルでお金なんていくらでも湧いてくる。


 とりあえず、目の前のオロスタキスをどうにかしないと。


「俺のパートナーに対しての言いがかりはやめてもらおう」


 サウンさんが助け舟を出してくれた。


「あなたが影の黒幕ですか。経済を活性化して何を企んでいるんです」

「はははっ、ラメレイを見てないんだな」

「王子が大好きなだけの女性に何があるというのです」

「そんなんじゃ、父の跡を継いで宰相にはなれないぞ。ラメレイはな、面白いぞ。予想がつかない。まるで暴れ馬だ」


 サウンさん、暴れ馬は酷い。


「そうですか。私の知らない彼女の一面があったというわけですか。猫を被っていたのを、見抜けなかった間抜けと言いたいのですね」

「あー、私の知らない間に」


 ヒロインが乱入してきた。

 収集が付くところだったんだから、ちょっかい出さないで

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る