第3章 薬師編

第19話 薬草人工栽培開始

 さあ、薬草人工栽培の開始よ。

 希少でない薬草で試す事にしたわ。

 まずは薬草が生えていた場所の土を採取。


「サウンさん、物を破壊せずに生き物を殺す魔術ってあります。熱も水も駄目。ただ単純に弱い虫ぐらいまで生き物を殺す奴です」

「あるな。生命力を奪う魔術だ。人間はほとんど効かない。もっぱら虫を殺すのに使っている」

「土に掛けて下さい」

「いいぞ。【ライフドレイン。魔力よ生命力を奪え】。こんな所だな」


「これって闇魔術ですか」

「そうだ。俺の属性は火と風であんまり得意ではないがな」

「邪魔力とはどう違うんですか?」


「どこで邪魔力の事を聞いた? 秘匿情報だぞ」

「話せません」


「そうか、まあいい。闇も光も自然にある物だ。だが、邪魔力は無の力だ。存在をない物としてしまう」

「嫌悪感や判断力を消して魅了したりするんですか」

「そうだな。反対に聖魔力は作る力だ。無くなった物を作る。邪魔力で消し去られた物を取り戻せる。もちろん怪我をした肉体も取り戻せるがな」


 そんな設定だったのね。


「ライフドレインは奪うのであって消しているわけじゃないのね」

「そうだ。その理解であっている」


 土の除菌はできたから、次は寒天に砂糖を少し入れて、除菌してない土の菌を培養しましょう。

 素人だから上手くいくかは分からないけど、失敗してもこれぐらいなら。


 数日経つと、ニュースで見た菌のコロニーが寒天に出来た。

 後はどの菌が薬草に必要なのか調べるだけね。

 専門家が欲しい。


「培養した菌のどれが薬草を育てるか調べたいんですけど」

「国の研究機関に送ってやろう。今までやった工程を書いてくれ」

「はい」


 菌と薬草の関係の推測を書いて、それから寒天での培養の事を書いた。

 数日後、返事が来た。


 非常に面白い知識をありがとうと書かれている。

 薬草との関係を調べるには最低でも数か月掛かると書かれていた。


 無菌に近い方が良い薬草もあるわよね。

 私は無菌で良く育つ薬草を探した。

 そして、いくつかの薬草が無菌に近いと育つ事が分かった。

 無菌の薬草は簡単よね。

 土を除菌すればいいんだから。


 種から発芽してしばらくは、無菌でないと育たないという事が分かった。

 大きくなると雑菌への抵抗力がつくらしい。

 これなら簡単。


 後は土の性質ね。

 酸性かアルカリかだわ。

 これは肥料と石灰で調節できる。


 私はいくつかの薬草の人工栽培に成功した。


 雇った人たちが畑でライフドレインの魔術を掛けて種を撒く。

 ふふふっ、大儲けよ。


 でも知識は独占したりしない。

 今日は畑の大地主達との商談よ。


「お集まり頂いて、ありがとうございます」

「儲け話があると聞いたが」

「そうだ」

「そうだ」


「薬草の人工栽培に成功しました」

「詐欺じゃないだろうな」


「疑うんなら自分でやってみて、試してみたらいかがかしら」

「その技術をただでは教えてはくれないのだろう」


「いいえ、ただでお教えしますよ」

「そんな上手い話があるか」

「ばかばかしい」

「いや、もしかしてあんた、聖女様じゃないか。ただで怪我した冒険者を治療してやったという」


「その呼び名は好きではないですが、私です」

「それなら、なんとなく分かる。怪我人が許せないって事だな。可哀想に身内が怪我で亡くなったのか」


 これにはどう答えよう。

 前世では病気や事故で知り合いが亡くなっている。

 たしかにポーションが前世にあれば救えた命もあるでしょう。


「ええ、病気や怪我は無い方が良いに決まってます。知り合いが何人か亡くなってます」

「みんな聞いたか。これは人助けだ。ここで躊躇したら男じゃない」


「試すだけなら」

「そうだな。畑一つやってみてからだな」


 しめしめ、大地主の株は最初に買ってある。

 今株価をチェックしたら爆上がりしてた。


 これだけでも大儲けよ。


「みなさん、安く薬草を供給して下さい。食べる物が無くなると困るので、無理のない範囲でお願いします」


 みんな納得してくれた。

 無菌の薬草の準備は整った。

 これで増産が確定よね。

 待ってなさい魔王。

 無限ポーションによるゾンビアタックをお見舞いしてあげるわ。

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