第18話 Eランク昇級のお祝い

 冒険者相手の事業は順調で、総資産は50億Aを超えた。

 上がるのが分かっていれば株なんて容易い。


 パン屋ギルドも好調。

 マヨネーズをつけて焼いたパンが大好評。

 好景気に沸いている。


 一度、パン屋のドルスのところにも顔を出さないと。


 レストランの席を予約した。

 元新人のフィカス君がランクEに上がった今日はそのお祝いよ。


 予約したのはテーブルが3つしかない小ぢんまりとしたレストラン。

 夫婦でやっているらしい。

 私は少し早めに行った。

 入口で予約したラメレイですと告げると席に案内される。


 壁際には花瓶があり花が活けてあった。

 壁には海を描いた絵が掛かっていた。


 席は私とサウンさんとフィカス君の三人分だ。


 しばらくして、チリンチリンとドアベルが鳴る。

 フィカス君が現れた。

 フィカス君は何だかそわそわしている。


「ちょっと待ってね。お腹が空いているところ申し訳ないのだけど、後一人来るから」

「えっ」

「どうしたの」

「二人で食事出来ませんか?」

「サウンさんはパートナーだから、帰ってなんて言えないわ。あなたも世話になったでしょ」

「そんな」


 チリンチリンとドアベルが鳴る。

 現れた人を見て私は微笑んだ。

 私が微笑むのを見てフィカス君も微笑んだけど、サウンさんを見て笑みが強張った。

 サウンさんは鬼教官だったから。

 慕われていると思ったけど、そうでもないみたい。


「悪い、待たせた」


 サウンさんが席に着く。


「では始めましょ」


 私が合図して、料理を持って来てもらった。

 フィカス君は無言で食べている。

 私とサウンさんは事業の事などをお喋りした。


「あの」


 料理を食べ終えたフィカス君が話し掛けて来た。


「何?」

「二人はどういう……いや、もういいです。俺、頑張ります」


―――――――――――――――――――――――

名前   レベル 現在値  安値   高値

フィカス LV8 356A 350A 370A

―――――――――――――――――――――――


 かなり上がったわね。

 売りましょ。


「ありがとう」

「あのどういう意味ですか?」

「頑張ってくれて、ありがとうって意味よ」

「やっぱり聖女なんですね。あなたが分かりました」


 何か勘違いしているような気もするけど、問題ないでしょ。

 さて、次の一手は何にしましょう。


「もし、魔王が攻めてくるとしたら、どうしたら良いと思う?」

「そりゃあ、戦力増強だな。そして装備。医薬品も忘れてはいけないな。訓練は言わずもがなだな」


 サウンさんの的確な答え。

 戦力増強は今やっている冒険者相手の事業で問題ないでしょうし。

 武器はお金さえあればなんとかなるでしょ。


 訓練は私にはさっぱりと分からない。

 お金で専門家を雇いたいわね。

 それにはもっと儲けないと。


 問題は医薬品よね。

 ポーションを作るのは薬草からが多い。

 この薬草が厄介なのよね。

 生える条件が厳しいらしくて、人工栽培できない。


 化粧品にポーションを使いたいって前に思ったのよね。

 これをするんだったらポーションの量産は避けて通れない。

 魔王も倒したいし、ひとつ薬草の人工栽培をやってみますか。



「ポーションを安く作るわよ」

「やっぱり聖女様だ」


「どうやってだ。数多くの貴族がそれに失敗して破産している」

「お金ならたくさんあるから、少しぐらい目減りしたって問題ないわ。方法はこれから考える」


「俺、頑張って、薬草を採って来るよ。栽培するのに必要だろ」

「期待しているわ」


 さあ、忙しくなるわよ。

 実はちょっと勝算があるのよね。


 前世の父が蘭をやっていたの。

 それで色々と話を聞いたのよ。

 その話が応用できるかも知れない。


 科学がない代わりに魔術や魔法がある。

 それを使えば可能かもね。

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