第16話 冒険者ギルドと提携

 今日も冒険者ギルドの酒場で、やさぐれ冒険者を探してリストを作る。

 リストもかなり長くなった。

 1週間も酒場に通うと馴染みになる。

 酒場の店員と仲良くなったりもした。


「よお、嬢ちゃん」

「ビレンさん、その後、怪我の具合はどうですか?」

「おかげさまでピンピンしてらぁ」


「装備が良くなりましたね」

「おう、絶好調よ。だが、心配は要らねぇ。怪我をするような無茶はしない」

「そうですか。安心しました」


「そういう表情を見ると、目つきはきついが、聖女様に見えるぜ」

「えー、そんな事ないですよ」


「ちょっと惚れそうだ。嬢ちゃんの護衛が睨んでるからもう行くぜ」

「お大事に」


 ビレンさんは売り時かしら。


―――――――――――――――――――――――

名前  レベル  現在値  安値   高値

ビレン LV28 519A 504A 522A

―――――――――――――――――――――――


 だいぶ上がった。

 粘ればもっと上がりそうな気もするけど、急激には上がらない気がする。

 売りましょ。


 1362万Aの儲け。

 家が一軒買える儲けよね。

 1週間でこれだと、この事業はやめられない。

 さあ、次の人に投資しましょ。


 今度は3人に投資した。

 どの人も20Aぐらい。

 20万株ずつ買った。


 治療して爆上がりしたけど、売らないでいたら、一人が怪我をした。


「何回もドジを踏むようだったら、見離すわ」

「今度は平気さ」

「お願いだから、死なないで」

「あんた聖女様だな。本気で言ってるかそうでないかぐらいは分かる。あんたのは本気だ。これからは慎重にやるよ」


 この人はもちろん治療してあげたわ。

 2度ある事は3度あるだから、治療して株価が上がったところで、売りよ、売り。


 死なないでの言葉に本気がこもっているのは当たり前。

 だって死んだら倒産と一緒だから。


 投資のやりくりして、お金が10億Aを超えた。

 お金はもちろん商業ギルドの口座にいれてある。


「よう、聖女様。ギルドのお偉いさんが会いたいってさ」


 何かしら。

 ギルドの応接室で待つ。

 ほどなくして、身なりの良い紳士が現れた。


「副ギルド長のリトープスです。お見知りおきを。今日お呼びしたのは冒険者の治療についてです。慈善ではお金が大変でしょう。ギルドがバックアップしますのでそれに関連した事業をやりませんか。治療費を立て替えてもらって冒険者に少しずつ払わせるとかです」


 治療費が戻ってくるのは嬉しいけど、儲けは十分出てるのよね。

 これでさらにお金を取ったらバチがあたらないかしら。

 ここは玉虫色の回答ね。


「考えておきます」

「事業を始められる事を願っています」


 ギルドと合同で何かやるのは構わないわ。

 余計なトラブルもないでしょうし。


――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前    レベル 現在値   安値    高値

ラメレイ  LV1 2589A 2565A 2591A

――――――――――――――――――――――――――――――――――


 私の株価が最近上がっているのよね。

 前にチェックした時は800ぐらいだったから。

 聖女という名声が後押ししている気がしないでもないわ。


 ここは私の株を売りね。

 そして、さっきの事業を始める。

 バチなんか知った事じゃないわ。

 私は悪役令嬢よ。

 呪われた存在なんだから、多少のバチなんて恐れないわ。


 でも立て替えた金額の何割かは免除してあげましょ。

 返済プランも冒険者側が自由出来るようにしよう。

 もちろん利息や延滞金は取らない。

 不足のお金は私が補填する。

 もちろん怪我をした冒険者の株は買う。

 これで行きましょ。


 事業を発表したら、私の株価は下がったので、底値を見て再び買い戻した。

 事業を始めたらなぜかまた株価が上がったわ。

 やっぱり聖女だと言われた。

 解せぬ、ぼったくりなんだけどね。


 怪我をした冒険者は私の所にくるようになっている。

 そうでないと株が買えないから。

 その時に私は死なないでと必ず言った。


 これを聞くと絶対に怪我をしないという気持ちになるみたい。

 本気で心配してくれるって思っているらしい。

 心配なのは株価よ。

 倒産したら、元が取れないんだから。


 本気で心配するでしょ。

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