第14話 薬草採取

 モンスターの出る森は別におどろおどろしくない。

 この葉の隙間から光が射し込んで、とても綺麗。

 黒薔薇の呪縛は戦闘がメインというわけでない。

 女性向けを意識したのかモンスターも可愛い。

 ここのモンスターはふわふわ蝶。


 ぬいぐるみみたいな外見の蝶で、モンスター感はない。

 ただし、その鱗粉は厄介だ、状態異常を引き起こす。

 ここではヒロインが聖魔力を使って活躍する。

 攻略キャラが状態異常に掛かって危機が訪れるとイベントが起こるという感じ。


 状態異常はポーションでも防げるんだよね。

 ポーションの名前はナオールE。

 もちろんユーフォルさんの薬屋で買ってきた。

 ヒロインはいないからね。

 もっともヒロインの聖魔力は目覚めてないけど。


 ここで何をするかと言えば、サウンさんの先導で薬草採取。

 ゲームでは薬草を採取すると薬屋でイベントが起こるのよね。

 どうだったかしら。

 よく覚えてないわ。


 私の本日のファッションは乗馬服。

 スカートで森に入るほど常識知らずじゃないわ。


「お前ら、デスバタフライの餌食になるなよ。仲間をよく観察して変だなと思ったらポーションを使え」

「はい」


 そうそう、ふわふわ蝶の正式名称はデスバタフライだった。

 例によって私は後ろの方で控えている。

 邪魔したら申し訳ないと思う。


 ふわふわ蝶は角兎みたいに、いきなり突進してきたりはしない。

 縄張りに入るとふわりと寄って来るのよね。

 サウンさんがそうレクチャーしてくれた。

 動かなければ襲われない。


 薬草採取するなら歩き回らないといけないけど。

 新人君達が歩き回りふわふわ蝶とエンカウントしていく。


 剣でふわふわ蝶を切り裂こうとするがヒラヒラと避けられてなかなか当たらない。

 見ていてもどかしい。

 私は石を拾うとふわふわ蝶に向かって投げた。


 石は偶然ふわふわ蝶に当たり、ふわふわ蝶が私に向かって飛んできた。

 ちょっと来ないでよ。


 サウンさんがすかさず斬り捨てた。

 それを見た新人君達は石でふわふわ蝶を挑発して、戦闘を有利に進め始めた。


「わはははっ、石をモンスターに投げる貴族令嬢を初めて見た」

「サウンさん、笑わなくても」


「本当に貴族令嬢か? 誰か入れ替わっているんじゃないだろうな」


 ぎくっとした。

 どう言ったらいいのかな。

 答えに詰まる。


 そんな事あるわけないでしょと明るく否定。

 女には秘密があるのよとミステリアスに誤魔化す。


「あのね。色々と話せない事があるのよ」


 正直に言ってみた。

 そうするのが正解なような気がしたからだ。


「そうか、変な事を言って悪かったな」

「いいのよ」


 ふわふわ蝶が仕留められ触覚が回収される。

 これがナオールEの材料になるのよね。

 ユーフォルさんにそう聞いた。


 ここの薬草は下級ポーションの材料になる。

 薬草も次々に集まった。


「うがぁ」


 一人の新人君が突然暴れ始めた。


「状態異常だわ。早くナオールEを飲ませてあげて」

「はい」


 錯乱した新人君をユーリ君が後ろから羽交い絞めにする。

 だけど、ユーリ君は投げられて気を失ってしまった。

 錯乱した新人君は、目を血走らせて口から泡を吹き、私に迫って来た。

 剣は落としているようね。

 これなら。

 私は駆け寄ると腕ひしぎ十字固めをやった。


 くっ、力が強い。

 早く。


 フィカス君がナオールEを暴れてた彼に飲ます。


「見事だ」


 サウンさんが拍手する。

 新人君達も拍手してくれた。

 体育の授業で、柔道を習っておいて良かったわ。


「君が好きになりそうだ。何をするか目が離せない。面白すぎる。くっくっく」


 サウンさんが、爽やかな笑顔でそんな事を言う。

 どうせ、私は芸人枠よ。

 でも好きになりそうだって。

 意識したのか顔が火照る。

 きっと真っ赤になっているに違いない。


 こうして、薬草採取は無事に終わった。

 フィカス君の株価は。


―――――――――――――――――――――――

名前   レベル 現在値  安値  高値

フィカス LV6 108A 94A 108A

―――――――――――――――――――――――


 順調よね。

 何時、売ろうかしら。

 そうよ、Eランクになったら、お祝いの食事の場で売りましょう。

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