第12話 面接

「最初の方、どうぞ」


 私はドアの外に立って居る冒険者を招き入れた。


「初めまして、ユーリです。戦闘には自信があります」


 自身満々にユーリ君はそう言った。


 株価チェック。


―――――――――――――――――――――

名前  レベル  現在値 安値  高値

ユーリ LV8  96A 91A 96A

―――――――――――――――――――――


 とりあえず1万株買いね。


「合格よ。装備を受け取って帰って」



 ユーリ君が装備を受け取って、鎧の着け方をサウンさんに教わる。

 株価チェック。


―――――――――――――――――――――

名前  レベル 現在値  安値  高値

ユーリ LV8 123A 91A 123A

―――――――――――――――――――――


 早速、売りよ。

 金貨27枚の儲け。

 皮鎧が金貨2枚で安物の剣が金貨1枚。

 装備が帰って来なくても金貨24枚の儲け。


 ぼろ儲けね。

 一回しか出来ないのが玉に瑕だけど。


 このような感じで何人もの株価を釣り上げては売った。


「最後の方どうぞ」


 ラメレイ商会に、新人冒険者が入って来る。

 新人君は短く刈り込んだ緑色の髪と目で、どこかあどけなさが残る少年だった。


「初めまして、フィカスでしゅ」


 私の前に座った新人冒険者は自己紹介で見事に噛んだ。

 笑いを懸命に堪える。

 腹筋が苦しい。

 駄目よ、チャンスを掴み取ろうと真剣なんだから、笑ったりしては駄目。


 そんな様子をサウンさんは生暖かい目で見ていた。

 壺に入っちゃったのよ。

 お願いだから、何か言ってこの笑いの発作を止めて。


 ええい、株価チェック。


―――――――――――――――――――――

名前   レベル  現在値 安値  高値

フィカス LV5  76A 70A 76A

―――――――――――――――――――――


 ふぅ、治まったわ。


「あのう、何か不味かったですか?」


 無言に耐え切れず、涙目で問い掛けて来るフィカス君。


「良いの。ちょっと考えてただけ」


 フィカス君の株を1万株買いよ。


「そうですか」

「装備を格安で貸す事にするわ」

「本当ですか。やった。これでEランクになれるかも。いいや、絶対になる」

「頑張ってね」

「はい」


 キラキラした目で頷くフィカス君。

 サウンさんから装備を受け取り、鎧の着け方をレクチャーされる。

 株価チェック。


―――――――――――――――――――――

名前   レベル  現在値 安値  高値

フィカス LV5  85A 70A 85A

―――――――――――――――――――――


 金貨9枚、儲けたわ。

 残り物には福がある。


 今までの新人冒険者は上がった瞬間に売ったけど、フィカス君は売らないでおきましょ。

 今までで一番レベルが低いから伸びしろはあるはず。

 それに、今日は金貨100以上儲けたから十分よ。


 さて、私達の株価は?


――――――――――――――――――――――――――――――――――

名前    レベル  現在値     安値      高値

ラメレイ  LV1     809A    754A    809A

サウンデル LV35 22,667A 22,664A 22,670A

――――――――――――――――――――――――――――――――――


 私の株価は絶賛上がり中ね。

 今日だけで私の株で金貨110枚の儲け。

 順調だわ。


 さて、ボーナス支給よ。

 サウンさんに金貨50枚を渡す。


「新人が、ちょっと心配だな」

「そうなの。装備が良くなったから、依頼の達成率が上がるんじゃない」


「装備が良くなると無謀になりやすい」

「それは困るわ。ギルドでの評判が悪くなると今後の商売にも差し支える」


「彼らに戦い方のレクチャーをした方がいいな」

「じゃあ、研修という事でやりましょうか」

「それがいいだろう」


 サウンさんは親切で優しいのね。

 私はゲームのような気持ちになっていたわ。

 装備が良くなると格上のモンスターに対抗できる。

 そんな風に考えていたわ。

 これじゃヒロインを笑えない。

 気を付けなくちゃ。

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