第11話 打ち明ける
「座って」
1階のテーブルの席にサウンさんを座らせた。
言わなくちゃ駄目かな。
でも。
サウンさんをチラチラと見る。
「早く言えよ。話があるんだろ」
ええい、ままよ。
「お話があります。私のスキルの話です。私のスキルは少し特殊なの」
「どう特殊なんだ?」
「人の価値を算出して、それに投資できるの」
「投資したお金はその人の元に行くのか?」
「考えた事がなかったわ。行くのかな? 私やドルスも、サウンさんも臨時収入が入ったとかはないわね。でもええと、値段が下がったり上がったりするって事は、私の他に投資している人がいるって事よね」
「そんなスキルは聞いた事がないな」
「話が進まなくなるから、その疑問は置いておきましょう。要は人の価値でギャンブルをやっている様なものなの。軽蔑した?」
「誰かを害するスキルではないんだろ?」
「ええ、投資したり投資を引き揚げたからといって、誰かに何かが起きたという事はないわね」
「なら構わないだろう」
ほっとした。
よかった軽蔑されてない。
「こっちは些細な事なのだけど。私、公爵令嬢なのよ」
「そうか。ちょっと不味いな。いや大丈夫か。なるようにしかならないか」
「何か問題が?」
「いいや、先が少し見えなくなっただけだ。こっちの事情だから気にする事はない」
懸案事項が一つ片付いた気分だわ。
サウンさんの事情は気になるけど、とりあえずは上手くいった。
この調子で仕事をこなしましょ。
「仕事なんですけど、新人冒険者と伝手を作る為に装備の貸し出しを格安でしようと思うの」
「そんな事をすれば赤字になるぞ」
「そうね。そこで私のスキルが活躍するの。まず貸し出しの資格があるのか判断するので面接すると言って呼び出して、その時に投資するわけよ。そして装備を渡す。装備が整えば駆け出しから一歩進めるわ。価値が上がったところで機会を見て回収する。もちろん、装備を盗んだり色々とトラブルはあるでしょう。でも人の価値さえ上がれば儲けが出る。装備をただであげても良いくらいのね」
「依頼を出すべきだな。貸出業の試験運用とでも言ったらどうか。それなら格安でも怪しまれない」
「それ、良いわね」
仕事の段取りも一段落した。
今日はお祝いしたい気分だわ。
そうよ、ドルスも呼んでお祝いしましょ。
テーブル一杯に料理を並べてドルスを待った。
着飾ったドルスが花束を持って、呼びに行ったサウンさんと共に現れる。
「ようこそ、私の城へ」
「お邪魔するよ」
和やかにお祝いは進んだ。
「パン屋ギルドの滑り出しは上々だよ。みんな秘伝を欲しがっている」
「くれぐれもパン種の作り方は教えないでよ」
「分かっているさ。秘密の漏洩には気を使っている」
「パンのレシピを書き出して置いたわ。これも上手く使って」
書き出したのはアンパン、クリームパン、サンドイッチになんちゃって焼きそばパン。
「凄いな。パンの常識を超えている」
ドルスの株に配当金が出ましたとメッセージが頭の中に。
そして金貨9枚と銀貨8枚が現れた。
「これは何?」
驚きの表情のドルス。
「私のスキルよ。お金を生み出すの」
「そんなのまるで神の祝福じゃないか」
「そうだな。ラメレイは神に愛されているかもな」
納得の表情のサウンさん。
神に愛されているなんて。
私のポジションは悪役令嬢だったはずよ。
それはヒロインの役目だわ。
でも、ラッキーなのは間違いない。
この株って配当も出るのね。
何に対しての配当でしょう。
会社だと利益の一部だけど、人間が起こす利益って何?
ドルスが稼いだ金の一部ではない気がする。
考えても仕方ないような。
気にしないでいきましょう。
さぁ、株価チェック。
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名前 レベル 現在値 安値 高値
ラメレイ LV1 741A 730A 741A
ドルス LV9 1,816A 1,807A 1,816A
サウンデル LV35 22,663A 22,558A 22,663A
――――――――――――――――――――――――――――――――――
みんな上がっているわ。
私もだけどドルスも大きく上がっているわね。
今の私の持ち株総資産は金貨1890枚。
ちょっとした屋敷が買えそう。
でも、まだまだ上げるわよ。
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