第40話 二人の約束②

リュウはリカコから渡されたリングの入った小さな紙袋をもと子の前に掲げた。

「リング?」

「サプライズも出来なくなったし、初めての結婚記念日にも間に合わんで本当にゴメンな。」

リュウは申し訳ないとうなだれた。するともと子はパアッと顔を明るくして、リュウに抱きついた。


「そんなこと!リュウさん、謝ることなんてなんにもないですよ。」

リュウはもと子に急に抱きつかれてヨロケながら目をしばたいた。

「なんで?女の子はこういうイベント大事なんやろ?」

「まあ、そうですけど。でもおかげで好みのリングをもらえることになったでしょ。それにリカコさんもDVのダンナさんと離婚できたし、みんなハッピーじゃないですか。」


「それでええんか?」

もと子はうなずいた。そしてうつむき加減でつぶやいた。

「リングが出来上がるまで、本当はリカコさんにリュウさんを取られてしまうんじゃないかって気が気じゃなかったんです。」

もと子の言葉にリュウは思わずもと子の肩を抱いた。


「そんなに心配してたんか?ないないない!100%ないで!」

「リュウさんのこと信じてるけど…それだけじゃダメだって思って、リカコさんに、「リュウさんは渡しません!」って宣戦布告しました。でも心配で…。」

「オオッ!もとちゃん、俺を手放さんって言ってくれたんか!」

うつむいていたもと子が顔をあげるとリュウは見たことのないほどの嬉しそうな顔。


リュウはもと子の肩に置いた手に力を込めた。

「嬉しいな。末永く俺と一緒におってな、もとちゃん。」

もと子もリュウの背中に手を回して照れくさそうに笑った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る