第39話 二人の約束①

二人の約束


 リュウともと子はラーメン屋で夕食を取った。その店はリュウが以前から行きたがっていた店。だがリュウは「うまいな。」と一言言っただけ。もと子はリカコのアトリエを出てからずっとリュウの口数が少ないことに気づいていた。駅からの帰り道、思い切ってもと子は切り出した。

「リュウさん、なんか元気ないですね。リカコさんが東京に行っちゃうからですか?」

眉を八の字に下げ、情けない顔をしたもと子が下からリュウを見上げた。



「もとちゃん、なんでリカコさんが東京に行ったら俺、へこむん?」

リュウは不思議そうな顔をした。

「だって…リカコさん、リュウさんのこと好きだったし、あんなにキレイなリカコさんに言い寄られてリュウさんもクラクラしたでしょ?」

もと子が悔しそうに唇を尖らせたのを見て、リュウは、プッと吹き出した。

リュウはもと子の尖らせた唇を指でつまんだのでもと子はフガフガと頭を振った。


「もう!何するんですか?」

怒ったもと子は今度は頬を膨らませた。

「アハハ、ごめん。俺がへこんでるから心配してくれてんな。リカコさんにクラクラするならもう何年も前になってるって。気になってるのはこれのことや。」

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