第31話 暴かれた悪事③
「アケミなんて女は知らない。そんなの詐欺、そうだ詐欺ですよ。それにリカコだってリュウっていう男がいるんですよ。この頃は家に帰りもしない。これは主婦としてどうなんだ?」
「アケミって女も和也くんの暴力もリカコの男だと君が言うリュウって男もみんな人をやって調べたよ。」
俊宏は立ち上がって事務机の上の調査会社からの報告書を和也の目の前に置いた。
「リュウって男は単なる客だった。でもアケミが君の子供を妊娠したのも、君がアケミに店を持たせて月々のお手当を支払って面倒を見ていたことやリカコに暴力を振るっていたのは事実だった。」
「付け加えますと、あなたに怪我させられたリカコさんの診断書はすでに取りました。」
「それに下妻さんから聞いた。良美さんと組んで僕を追い出して社長になる計画を立ててたらしいね。リカコは君たちと組まないよ。残念だったね。」
和也は顔色を青くして立ち上がった。
「それがどうした?俺は北斗財閥の人間だぞ。お前らが頭下げて結婚してくれって言うから結婚してやったのに、なんだこの言い草は!俺はリカコと離婚なんかしないからな!」
こめかみに血管を浮き立たせて和也は吐き捨てるように言うとテーブルの上にあった書類を床に叩きつけて副社長室から出ていった。
リカコはリュウともと子の結婚記念日に間に合うようにアトリエで連日遅くまで制作にたずさわり、リングはようやく完成した。あとは、もと子にはめてもらって微調整するばかり。プレゼント用の箱の色や包装のこともリュウに決めてもらわないと。二人に連絡しようとリカコがスマホを持ったところで電話がかかってきた。相手は俊宏。リカコは急いで電話に出た。
「リカコ、離婚の話やけどな、この間、和也くんに話した。アケミってヤツのこと、お前に振るった暴力のこと、リュウって客のことを調べたって。それでお前がサインした離婚届を出したら破り捨てたわ。」
「離婚届、アカンかってんね。」
リカコの落胆した声に俊宏は笑った。
「一回で全部うまくいくわけないやんか。そんなん織り込み済みやろ?良美さんが約束した社長にする話もしたけど、否定してなかったからやっぱり事実やったと思う。」
「ホンマにお母さん計画してたんやね。いくらなんでもやりすぎやわ。」
「リカコが僕の側についてくれるんなら僕は全力でお前を守る。絶対、和也と離婚させたるから心配するな。今度、顧問弁護士さんと打ち合わせしよう。」
リカコは大きくうなずいた。今度こそ人生を取り戻す。運命が動き始めたことを感じた。
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