第18話 かなわぬ恋①

かなわぬ恋


 リカコはもと子のリクエストをベースにデザイン画を書きあげた。早速、もと子の夜勤明けの昼下がりにリカコのアトリエで、もと子にデザイン画を見てもらうことになった。

リカコのアトリエは繁華街から少し住宅地に入ったところにある。駅から遠くなく、もと子は迷わずたどり着くことができた。マンションの一階、ドアを開けると奥の工房からリカコが出てきた。

「わざわざ来てくれてありがとうね。」

受付横のテーブルの前のイスに座るようもと子は案内された。


もと子が腰かけて待っているとリカコがデザイン画を持ってきた。

「お待たせもと子さん。こんな感じはどうかな?」

リカコはもと子の目の前に3枚のデザイン画を並べた。一つ目はシンプルな立て爪のソリティアのリングのサイドに流れるようなカッティング、2つ目はメインのダイヤの隣に小粒のダイヤが1つ、3つ目は小粒のダイヤが2つ。

「うわあ、どれもステキ!」

素直に目を輝かせるもと子。何度もデザイン画を手に取っている。リカコは微笑ましい気持ちでもと子が悩むさまを見ていたが次第に黒く重たいものが心の奥底に広がってきた。

私だってリュウを愛していたのに。

なんでこんな普通の子なん?

もし結婚話が出る前に告白していたらアタシがリングをもらう立場だったはず。


ようやくもと子は選んだデザイン画をリカコに渡した。もと子が選んだのはソリティアタイプのリングにカッティングを入れたもの。ダイヤは丸いラウンドタイプ。

「もと子さんはシンプルなのが好きなのね。承りました。」

リカコはデザイン画を抱えて、もと子に微笑みかけた。

「せっかくの機会だからよかったらちょっとオシャベリしない?二人の馴れ初めとか聞かせて。」

艶やかで魅惑的なリカコの笑顔。もと子はうなずいてしまった。

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