第10話 妻の彼氏?②

「リカコさん、電話ありがとう。忙しいのにゴメン。俺、全然決められへん。女の子ってどんなエンゲージリングを喜ぶんやろ?なんかアドバイス下さい。」

電話の向こうのリュウの困り顔を想像してリカコは思わず、クスリと笑った。

「彼女、普段どんなリングを気に入ってつけてる?」

「もとちゃん、結婚指輪しかしてないわ。」

「アクセサリーはしないタイプなんやね。」

「というか、持ってないと思う。仕事覚えるのに忙しいし、奨学金返さなアカンからそこまで気がまわってないんやと思う。」

「うーん、そうなんだ。じゃあ、服装はフェミニンな感じ?ボーイッシュな感じ?」


「たまに二人で出かけるときはスカートはくけどいつもはパンツかな。」

「そうかあ。リングは…シンプルなのが無難かな。」

「無難…」

リュウが電話の向こうでガッカリしているのが手にとるようにわかる。

「ちょっと考えてみる。あんまり時間もないんでしょ?」

「うん、結婚記念日まであと2ヶ月かな。」

また近いうちに連絡すると伝えて、りかこは電話を切った。


いつも無表情なリカコの顔が明るくなっている。和也はいつの間にかリカコの心に誰かが住み始めたのではないかと爪を噛んだ。

何、勝手に盛り上がってんの?

そんなの、俺は許さないぞ。

自分と目を合わせないリカコをキッとにらんだ。


リカコからラインに画像が送られてきた。それはリングの台の種類とダイヤのカットの表。カタログをもと子に隠れてながめていたリュウは速攻でリカコに電話をした。

「一般的なデザインだから、この中の組み合わせで考えてみたら?彼女の雰囲気とか、実際に指にはめたところ想像してみてさ。」

「うわあ、難問やな。」

「何いってんの?それぐらい頑張んなよ。」

リカコはリュウとのこんなつまらないやりとりが楽しい。にこやかに笑うリカコ。最近、よく帰宅する和也は新聞を読むふりをしてリカコの楽しげな様子を憎々しげに見ていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る