第7話 リカコ②
ショーウィンドウの中、シンプルに並べられたリングがキラキラ光る。ここはデパートのジュエリー売り場。リュウは一人でリングをながめようとショーウインドウに近づく。だがゆっくり見る間もなく店員の女性に「プレゼントですか?」と声をかけられ、そのたびにそそくさとその場を離れる。リュウは気恥ずかしくてたまらない。
そうやってもういくつショーウインドウをまわったことか。リュウはここを最後と目の前のショーウインドウをのぞきに行った。また店の女性が近づいて来た。ショーウインドウから離れようとしたところで肩を叩かれた。
「リュウ、なにしてんの?」
振り向くと艶のあるストレートのロングヘアの美しい女が微笑んでいた。クラブのスタッフ時代のリュウの取り巻きの一人、リカコだった。
「あ、リカコさん!久しぶり。」
「彼女にあげるリング探してたんでしょ。相変わらずモテモテなんだから。」
イタズラを見つけたようにリカコはリュウをツンツンとつつく。
茶目っ気のあるリカコの笑顔にリュウは頭をコリコリとかいた。
「探してるんだけど、なんか気恥ずかしくてじっくり見られへんねん。」
するとリカコはサッとリュウの腕を取った。
「仕方ないなあ。後でお茶ごちそうしてよ。」
リカコはショーウインドウに近づくと並べられたリングを一通り見た。そして近付いてきた店員に言った。
「困ったわ。どれもステキで決められへん。じっくり考えたいのでカタログ頂けます?」
ニッコリと微笑んだ店員から最新のカタログをもらったリカコは近くの店全てに同じことをした。
カップルのフリをしていたリュウはリカコに引っ張られるままついて行き、結構な数のカタログを手に入れることができた。その後、二人は店と同じ階の喫茶室に入った。そこはオーク材をふんだんに使った落ち着いた雰囲気の喫茶店。椅子に座るとリュウはリカコにお礼を言った。
「リカコさんのおかげでたくさんのカタログを集められました。ありがとうございました。リカコさん、好きなの頼んてください。」
「やあね、大して事してないやん。じゃあカフェオレお願いするわ。」
「そんなのでいいの?」
「ええよ。それよりアンタ、最近はどう?」
リカコはリュウの左手の薬指のリングをチラリと見た。
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