第6話 リカコ①

リカコ


「ゴメン、もとちゃん心配かけたな。その件、今、川端君に怒られたところや。」

「川端君?」

川端はもと子の同期であり、同僚。そしてクラブの人気スタッフ時代のリュウのファンでもあり、リュウともと子のよき理解者である。

「そうそう。デパートで一緒にいた女の人は昔のお客さんで今、ジュエリーデザイナーしてる人なんや。もうすぐ結婚記念日やろ?俺、サプライズでもとちゃんにエンゲージリングを渡そうと思っててん。」

エンゲージリングの言葉を聞いてもと子は目を見開いた。


「でな、デパートのリング売り場に一人で行ってんけど恥ずかしくて全然ちゃんと見れんかったんや。困ってたら偶然リカコさんに声かけられて、カップルで来てるふりしてカタログを何冊も集めてもらってん。でもどれがもとちゃん、喜んでくれるんか何度見てもようわからん。それでリカコさんからいろいろアドバイスもらってたんや。」


リュウはもと子の手をひいて仕事部屋に連れて行った。引き出しの中から数冊のリングやアクセサリーのカタログを出して、もと子に渡した。表紙には美しいデザインのリングにダイヤがきらめく。もと子はカタログを見るなり青かった顔色がみるみる良くなっていく。


「リュウさん…」

もと子は頬をピンクに染めてリュウに抱きついた。

「ゴメン、心配かけたな。そうや、この間、リカコさんがデザインしてあげてもいいよって言ってくれたんや。もとちゃん、どうする?」

「ええ?私もエンゲージリングなんてよくわからないです。どうしよう?」

困ったと言いながらももと子はカタログを見始めた。

嬉しそうなもと子は見て、リュウはリカコと再会した時のことを思い出した。


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