第5話 夫のかくしごと⑤

 仕事部屋から戻ったリュウはもと子がほとんど食べていないことにようやく気がついた。

「あれ?もとちゃん、全然食べてないやん。体調悪いんか?大丈夫か?」

リュウはもと子の隣にやって来て、もと子の額に手を当てた。

「熱はないみたいやな。お腹痛いんか?」

リュウが言い終わるやいなや、もと子はリュウにしがみついた。驚くリュウをもと子は目に涙をためて見上げた。


「す、好きな人が出来たんですか?もう私のこと嫌いになったんですか?」

そこまで言うと大粒の涙をこぼした。

「え?え?何のこと?」

「今日、先輩が教えてくれました。リュウさんがきれいな女の人と腕組んでデパートでリングを見てたって。だから最近、すぐ部屋にこもってしまうんですか?」

ああ、それか!

一言漏らすとリュウは頭を抱えた。

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