第2話 夫のかくしごと②
昨年結婚したもと子は、ようやく落ち着いた生活をおくれるようになったので小学生の時に死んだ両親に結婚の報告をしようと考えた。しかし子供の頃に親をなくしたため、墓もない。どうして良いのかわからない。そこで先日、夫が小さい頃から親しくしているおばちゃんを訪ねた。
「毎年お盆にうちは四天王寺さんで先祖供養してもらうからお盆に一緒に行こ。そやから今は近くのお寺で仏さんに手を合わせるだけでええんちゃう?」
「じゃあさっそく近所のお寺に行ってみます。」
「もと子ちゃん、なんかあった?今日はなんか声に元気がないで。」
おばちゃんの言葉にドキリ。
「実は最近、リュウさんが冷たい気がするんです。仕事で忙しいって言うんですけど。帰ってもすぐ部屋にこもって私と顔を合わせるのを避けてるみたい。」
「そんな事が。あの子のことやから今は仕事に集中してるんやろね。この間、電話でしゃべったときは、「いずれ子供が出来た時のために俺、頑張らないと。」って言ってたよ。リュウちゃん、器用な子じゃないから、そう見えるんちがう?ご両親に手を合わせたらもと子ちゃんを守ってくださると思うよ。」
おばちゃんの言葉に励まされ、もと子は近所の寺に行くことを決めた。
もと子の家からいつも行くスーパーへの途中にこじんまりしたお寺があった。山門をくぐって境内に入ると目の前にかわいいお地蔵さんが祀られている。その横を通り抜けると本堂があり、なかなか立派な仏像が祀られている。賽銭箱の横に千手観音と書かれた板が飾ってあった。
観音様、そのたくさんの手の一つで私をお救い下さい。
「お父さん、お母さんが安らかに眠れますように。そしてリュウさんと幸せな家庭を築けますように。」
もと子は心を込めて祈った。
観音様に手を合わせて気持ちが晴れやかになったもと子はおみくじをひいてみた。
結果は末吉。願い事のところには「危うい。心してかかれ。」とあった。
もと子は思わず目の前の観音様に再び手を合わせた。
「守って下さい!」
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