主人公のミヤビが住むN村には、たくさんの不思議な風習が残っている。
その中のひとつが、『いまわさん』と呼ばれる風習。これは亡くなった村人を幽霊として復活させる儀式だけれど、ほとんど成功しない。
でも、N村には一人だけ幽霊が住んでいる。永遠の17歳となった、女子高生のマリカが。
あらすじにあるように、村には『いまわさん』のほかにも、由来が不明の習わしや言い伝えがたくさん残っています。でも、N村出身のミヤビにとっては普通のこと。
読者はどちらかというと、村の外から引っ越してきた親戚の環とともに、村に蔓延るそこはかとない違和感を奇妙に思うことでしょう。
違和の象徴たる幽霊のマリカは、幽霊というイメージとはかけ離れた怠け者でどこかコミカルなキャラクター。
ミヤビとの絡みはずっと追いかけたいほど騒がしくて日常的。なのにやっぱり、あちこちに奇妙な雰囲気が漂っているのです。
その奇妙な雰囲気は、話が進むにつれて明確な形を伴って忍び寄ってきます。
キャラクター同士の軽快な掛け合いを挟みつつ、油断したところにゾクっと怖いものがやってきて、さらに切なさも垣間見える。気がつけばこの物語の世界にどっぷりと浸かっている自分がいます。
マリカの抱える過去、村に秘められた謎、環に忍び寄る怪異…。
ぜひその目で真相を確かめてください。