第46話 対策されることの恐怖
階段を登り終えるとそこは広々とした部屋だった。
今まで日の光の入らない地価を通って来たためか、外の光が見えるというだけでも安心感を覚える。
「思っていたよりも簡単に侵入に成功したね。出口で待ち伏せでもされているかと思ったけど」
「あら、そちらの方が良かったかしら?」
「何奴!?」
声のした方を見ると、淡い桃色のドレスの少女が立っていた。
確かにこの部屋に入った時にはいなかった。
一切の気配も無く現れたこの少女はまず間違いなく天界の幹部だろう。
「どんな人たちなのか見させてもらってたの。期待通りに強そうで私ワクワクしちゃう」
「そりゃどうも。君は確かアルマだったかな?」
「ふふっ神様に名前を覚えてもらえてたなんて光栄だわ」
どこか妖艶な雰囲気を出しながら神に近づいていくアルマ。
身長こそ低いものの決して細すぎるわけでは無く、出るところの出た体つきは見る者を魅了させる。
濃い桃色の髪と童顔も相性がいい。
しかしまあ、どこがとは言わんが我の方がデカイがな。
アルマはそのまま色白でしなやかな腕を神の顔へと伸ばすもののスルリと避けられてしまい、触れることは叶わなかった。
「あれ……?」
「すまない。部下に手を出したら懲戒免職どころでは無いんだ」
「嘘……私のチャームが効いてないの?」
困惑の表情を浮かべるアルマ。自分の力によっぽどの自身があったのだろう。
わかるぞその気持ち。
自分の力を過信していた時に自分よりも強き者に出会うと、困惑や驚愕といった感情に支配されてしまうからな。
「それならいいわ。実力で潰すまでよ」
「戦闘は避けられない……か」
皆アルマから距離を取り一度固まる。
神から情報を得ようとするもアルマについて詳しくは知らないらしく、情報の無い状態での戦闘となった。
何をしてくるのかわからない以上、まずは慎重に立ち回ることが優先される。
「ではまず我が壁を張ろう」
「頼んだぞ国王様。私と海神が前に出るからエレナとディアベルは援護をしてくれよ」
「了解だ」
「わかりました。先ほどまでの失態、ここで晴らさせていただきましょう」
エレナは幾分かマシな顔色に戻っており、最低限戦える状態までは回復したようだ。
「あら、面倒な壁ね」
アルマは遠距離魔法を使うがその全てが国王の張った壁に防がれる。
ただ、アルマはそのような状態でも常に余裕そうな表情を崩さなかった。
まるで何か対策でもあるかのようだ。
「うおりゃっ!」
「ふふっ遅いわね」
アリサはアルマに肉薄し神殺しの剣で攻撃するも、紙一重で避けられてしまう。
鞘から抜くことが出来れば重さも減り何とかなっていたのかもしれないが、残念ながら勇者の枠組みから外れたアリサでは剣を抜くことは出来ない。
しかしエレナと国王が魔法主体である以上、この剣を扱うことが出来るのは現状アリサのみなのだ。
なんともむず痒い状態である。
「それではこれでどうかのう!」
「ぐっ!?」
背後へと周っていた海神が固く握りしめた拳を放つ。
しかしアルマは即座に身を翻し両手で拳を受け止めることでその衝撃を吸収した。
それでも元々の威力が高すぎるためか衝撃すべてを受け止めることは出来なかったようだ。
「へえ、中々やるじゃないの」
「そちらこそな。わらわのそれなりの一撃をこうも容易く耐えてしまうとは」
今の攻撃がそれなりの一撃だと言うことが驚きだ。
我であれば軽く吹き飛ばされておるくらいだったはずなのだが。
「こちらも行きますよ魔王様」
「ああ。ただ、我の攻撃があやつに通用するのかわからなくなってきたぞ」
「ここまで来て何を言ってやがるんですか」
エレナと共に魔法を放つ。
我の放った炎魔法とエレナの放った氷魔法が混ざり合い極太のレーザーと化す。
神の使い程度であればまず間違いなく一撃で葬り去ることの出来る威力だ。
いくら彼女の耐久性が高けれども無傷と言うわけには行くまい。
だがその願いもむなしく、放たれた魔法はアルマの目の前ではじけ飛んだ。
「な、何が起こった!?」
確かに命中したはずだった。
躱された様子はない。確実に命中するコースだったはずだ。
いや、そもそも当たった当たっていないという次元の話しでは無い。
無効化された。
そう考えるのが一番自然な消滅の仕方であった。
「何故って顔をしているから教えてあげるわ。私は魔法を無効化する能力を持っているの。魔法攻撃主体のあなた達にはさぞかし辛いでしょう?」
アルマは自分から答え合わせのように能力の事を喋ってくれた。
能力の強さもそうだが何より気になることがある。
天界の者たち、自分から能力のことを言ってしまう者多くないか……?
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