女魔王、攻め込んできた勇者に殺されると思いきや堕とされてしまう

第47話 対策されていたのはどっち

「さぞかし怖いでしょう？　自分の攻撃が通用しないなんてね」

　笑みを浮かべながら自信満々に能力について喋るアルマ。

　天界の者たちは皆こうなのであろうか。

　こうも簡単に手の内を明かすと言うのは、それだけ強者であるということの裏返しなのだろうか。

「だからね、私の前ではこんな壁は無意味なのよ？」

「む、壁を無効化するか。その能力、本物のようだな」

　国王の張っていた壁が解除されてしまった。

　相当な衝撃に耐えることの出来るあの壁がいとも容易く破られるなどありえない。

　先ほどの魔法消滅と言い彼女の能力は本物なのだろう。

　ハッタリをかけるためにおしゃべりを演じたと言うわけでも無いということだ。

「次はこちらから行かせてもらうわ！」

　アルマは強く地面を蹴り、一気に国王へと迫った。

　国王は腹部に連撃を叩きこまれるが、パワードスーツのおかげで致命的なダメージを受けずに済んでいる。

「……え、何これ？　硬くない……？」

「そのはずだろう。何しろ私たちはこれを着ているんだからな」

　アリサはパワードスーツの透明化を解除する。

　銀色に輝くその姿が現れ、アルマはその姿に目を丸くした。

「何それずるくない！？」

「いや、魔法無効も中々のズルだからな！」

「なら魔法を使えば良いだけの事！」

　アルマは魔法の詠唱を始める。

　いくらパワードスーツと言えど流石に真正面から攻撃を食らうのはリスクがある。

　避けられる攻撃は極力避けるべきだろう。　

「食らいなさい！」

　複数の火球が連続で放たれ続ける。

　彼女は洗練された強力な一撃では無く、数撃てば当たるといったタイプの攻撃を使用するのだろう。それでも一発に込められた魔力量は凄まじいものではあるが。

　我が魔王軍であれば四天王以下の者なら軽く倒せる。それくらいの威力がある。

　天界の基準ではそれくらいの威力でも連射タイプの魔法となるのか。恐ろしい話だ。

「いつまで避けていられるかしら！」

「流石にこのままずっとと言うわけには行かないな。ディアベル、何か手はあるか？」

「それならここに良いものがある」

　以前魔法を無効化する力を持ったクラーケンに手も足も出なかったことがあり、このようなことが何度も起こっては命の危険があると考えた。

　そこで魔族領全体を囲っている魔法無効化を無効化する装置を小型化して持ち歩けるように開発を進めていたのだ。

「これを使えば魔法があやつに通るようになるはずだ」

「なるほどな。でもあいつ自身の魔法耐性が高かったらどうするんだ？」

「それなら心配はありませんよ。あのアルマという少女、どうやら魔法無効化を過信して魔法への耐性は考えていないみたいですので」

「わかるのか？」

「オレのギフトは魔力を直接操作出来ますから、これくらいの情報は簡単にわかりますよ」

　エレナの言葉を信じ、装置を起動して再度我とエレナで魔法を放つ。

　先ほどよりもさらに魔力を込め、この一撃で終わらせられるようにする。

　無効化を無効化するとはいえ、それすらも無効化される可能性があるため戦闘が長引くことは避けたい。

「あら、また魔法攻撃？　効かないって言ったのに……え、嘘どうして！？　無効化されない！？」

　先ほどと同じように魔法を無効化しようとしたであろうアルマだが、装置によってそれは出来なかった。

　極太レーザーが彼女に直撃する。これほどの威力であればかなりの痛手を与えられたはずだ。

「……うぐっ。どうして無効化出来ないの……」

「それは魔法の無効化を無効化したからですよ」

「な、貴方いつの間に！？」

　エレナはいつの間にかアルマの背後に周り抱き着いている。

　エレナが彼女の首に手を触れているのを見て、我の中のある記憶が蘇った。　

　心臓が激しくなるのと同時に悪寒がする。あの感覚はよろしく無い。

「くっ、迂闊だったわ……。さあ、殺すならさっさと殺しなさい」

「そうですね。その前に少し楽しませてもらいますけど」

「え？　いぎっ！？　何……ヤダ痛い痛い！！」

　エレナは直接魔力を操作することで対象の感覚も操作できる。

　恐らく彼女は今痛みだけを彼女に与えている。ダメージ自体が無い以上死ぬことは無い。それがかえって地獄だ。死によって解放されることが無いのだから。

「一思いに……殺しなさいよ……」

「それじゃあ楽しくないですからねぇ」

「ヤダ……また来る……え、あぁっあ？　なんっで……気持ち良いっの？」

「快楽と苦痛を交互に与えられる気分はどうですか？　オレはこれで何人もの魔族を中身から壊しました」

　それ魔王の前で言うことか？

　まあ魔族と人族が争う以上殺されることには文句は無いが……。

　……強くなければ、死に方も選べないのだな。

「ああっぁあ……いぎっイヤ……あぐうぅっ」

「魔法無効化に頼りきりで魔法に対する耐性を疎かにした自分を反省しやがってくださいね？」

　恐怖と悦楽、両方が入り混じる表情のままただただエレナの好き勝手にされるアルマ。

　もはやただの凌辱と言うか、どちらが悪かわからない。

　今の彼女を見て勇者だと信じる者はきっといないだろう。

「おぉっおぉおっ♡　あがっぁあひぐっ♡」

「ほらほらもっと良い声で鳴いてください。バドンとの戦いで負った精神ダメージを回復させてもらいますから」

　この後もしばらくエレナの遊戯は続いた。

　こんな光景を延々と見せられ続けるこちらの身にもなって欲しいものだ。