第43話 トラウマものだな
目の前に立ちはだかる男バドン。
神は手早く彼についての最低の悦明をした。
鎧は強固な素材で出来ており、生半可な攻撃では傷一つ付けられないと言う。
また大量に眷属である虫を召喚し襲い来るらしい。
「お前もディアウス側に付いたんだな」
「まあそういうことよ。だからまあ死んでくれや」
バドンは虫を召喚し、こちらに飛ばしてくる。
一匹一匹の魔力反応は小さく、そこまで対処が難しいものではない。だがとにかく目の前に大量の虫が飛んでくると言うのは、精神的に問題がありすぎる。
我だって乙女であるため、虫は苦手なのだ。
そんなことを言っていられない程に虫による攻撃は耐え間なく行われる。
「んーこれだけ飛ばしているのに毒が効かないっておかしくない?」
バドンは首を傾げそう呟くが本当に困惑しているわけでは無さそうで、強者としての余裕を感じた。
ただその余裕には感謝する。この虫たちに毒があるという情報を得られたのは大きい。
パワードスーツによって直接攻撃を受けないため、ヤツ自身が漏らさなければ気付けなかった。
「皆の者、一度下がるのだ! 我が壁を張ろう!」
国王の掛け声を聞き、一度バドンと距離を取る。
次の瞬間我らとバドンとの間には壁が張られ、飛んでくる大量の虫はその壁にさえぎられた。
次々に召喚されては飛んでくる虫たちはミスからの命のことは考えていないのか、玉砕覚悟で突き進み続けている。
後から召喚された虫によって壁に張り付いていた虫が押しつぶされ、ぐちゃっという不快な音と共に
体液をぶちまける。
「うっ……」
「そういえばエレナは虫が大の苦手だったな。大丈夫か?」
「大丈夫ですよ……この程度勇者には何ともうぐおぇ」
「仕方が無い。エレナは一旦後ろまで下がらせよ」
あの状態では当然のごとく戦力にはならない。
この場は勇者一人抜きで何とかするしかない。
「知っているぞその壁。ギフトによるものだな? いつまで耐えられるかねえ」
「どうにかしてこの虫を対処してヤツに攻撃を当てなければな」
「とはいえ、壁を解除した途端大惨事になることは目に見えているからの。流石のわらわも嘔吐している少女は好かん」
「なあディアベル、あのおっぱい光線はどうだ? あれなら一気に虫たちを焼き殺してバドンとかいうヤツにも攻撃できるだろ?」
「確かに火力面では問題は無いが、あの威力と範囲の攻撃をここで行えばまず間違いなく崩落してしまうだろう。あと、おっぱい光線と呼ぶのはやめろと言っているであろう」
「なんじゃそのおっぱい光線というのは!?」
目をキラキラさせて話に割り込んでくる海神。
だが今は彼女の相手をしている暇は無い。
「詳しく聞かせてくれれば、この状況に対処できるかもしれない情報を教えてやろう」
そうきたか。
「ならしょうがないな。私が教えてやる」
「本人の了承を取らずに何を!?」
あの時のことをアリサは説明した。
神の使いによって服が透明化していたこと。魔力砲のこと。
やはり海神は我が裸で戦っていたことについて聞いている時に一番顔を輝かせていた。
あの時のことを思い返すと顔が熱くなる。耳まで熱い。
「なるほどのう。裸で戦うムチムチボディのセクシーな女性……良すぎるのじゃ」
「詳しく聞いたであろう? さあ情報を言うのだ」
「まあまあそう慌てるでない。そうじゃの。深海にいた時、エビの魔物が良く訪れるのじゃが」
「その話、今関係あるのか?」
「ヤツらはとにかく動きが遅くての。見ているとなんだかムズムズしてくるのじゃ」
「不味いな。壁を張っていられるのはあと少ししか無い」
「神様のおっしゃられる通り、我の壁の力は長い時間維持出来ん。一度解除し張り直す必要がある」
国王が張った壁はそろそろ効果が切れてしまうらしく、そうなればまたあの虫地獄の始まりだ。
早く対処法を聞かなければ。
「ある時海底火山が噴き出した時があったのじゃが、今まで動きの遅かったエビたちは比べようもない程に素早く動き始めたのじゃ。つまりヤツらは体温が低くなると動けなくなる」
「なら温度変化魔法を使えば良いのだな。それなら直接的な衝撃は発生しないからここが崩落することも無い」
「よし、じゃあ誰かその魔法を……使えるヤツ、この場にいるか?」
今この場には壁張りとその維持をする国王、魔法主体では無いアリサと海神と神。
我は攻撃系の魔法を主としているため温度変化魔法は使えない。
「オレ……使えますよ……うぷっ」
後ろに下がらせていたエレナが最悪な顔色でそう言った。
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