第41話 決戦の時

 夜が明け、とうとう決戦の日がやって来た。


「それでは行こうか」


「行くと言ってもどうするのだ。以前、天界と連絡が付かないと言っておっただろう?」


「その点なら心配は無い。ディアウスとのパスは繋いでいるからそこを経由して天界へと転移する」


 確かに海神の城ではディアウスと通信を行っていた。

 であれば何かしらのパス自体は繋がっているのか。


「早速転移をするから近づいてくれ」


 勇者3人と海神、そして我の5人は神に近づく。

 いよいよと言うこともあって皆表情が硬い。戦いの前なのだから当然か。


 あの頃は思ってもみなかった。まさか人族と共闘することになるとは。それのみならず共通の敵としていた神でさえ共闘する関係になるなんてな。


「あ」


「おいなんだどうした!?」


 あからさまに異常事態が起きた類の『あ』であった。

 絶対にいい知らせでは無いことは明白だ。


「おいおいその『あ』は絶対不味いやつだろ」


「転移しようとしてるのがバレてパスを閉じられた。悪いが衝撃に備えてくれ」


 神がそう言い終わった瞬間には、周りの風景は変わり天地が逆さまとなっていた。



「ついに来たか神よ。しかし、私の作りし新生魔王軍に勝てるかな?」


 天界にある魔王城の頂上にて不敵な笑みを浮かべるディアウス。

 玉座に座るその姿はまさに魔王の中の魔王と言った威圧感を放つ。


「其方らの戦い、とくと見させてもらおう」


 水晶に映る神たちを見ながら、ディアウスは余裕そうな表情を浮かべていた。





「ぐげっ」


 頭から落下したものの、その程度で大きなけがをする程虚弱では無い。

 すぐに体勢を立て直し接敵に備える。

 だが攻撃されることは無かった。


「すまない。まさか逆探知されるとは」


「いや良いのだ。天界にたどり着けたのならひとまずは目的通りだからな」


 天界。初めて見るがその姿は地上とさほど変わらない。

 植物が生え空があり地がある。

 どす黒い雲に覆われている空は、天界というイメージとは大きく違うようにも感じた。


「不味いな。だいぶ侵食されている」


「侵食とな?」


「天界には本来植物なんか生えていないんだよ。でもディアウスはここを地上と同じような環境にしようとしている。そうなればここは天界としての力を失ってしまうだろう」

 

 この感じ、恐らくそう長くはもたないのだろう。

 しかし天界が無くなれば勇者は新しく生まれなくなるのだから、我々魔族にとっては都合が良いのか?


「あ、言っておくけれど天界が崩壊したら地上も崩壊するからそこんところよろしくね」


「貴様心が読めるのか!? ってそうでは無く、地上が崩壊してしまうというのは本当か!?」


「ああ。たぶんそのことをディアウスは知らない。このまま放っておけば世界丸ごとバイバイということになるね」


 もはや魔族云々と言った騒ぎでは無くなってきた。

 仮にディアウスを倒せなくとも最悪の場合は魔族領の結界や防衛設備を強化して何とかしようかとも考えていたが、世界丸ごと滅んでしまうのでは何の意味も持たない。

 もはや我々に残されているのは、ディアウスに対抗するか世界の崩壊に巻き込まれるかしかないと言うのか。


 しかしそれならそれで踏ん切りが付くと言うもの。どちらにしろ戦わなければならないのなら、そちらの方が興が乗る。

 正真正銘勝った者だけが生き残るのだ。

 いや、ディアウスが勝った場合世界が滅ぶから誰も残らないのか。

 なら事実上勝つしかない訳だ。


「ディアウスは魔王城を築いているようだけど、恐らく幹部もそこにいるはずだ。捕捉される前にさっさと移動しよう」


 ただ遠くに見える雷雲の中に一際目立つ建物がある。あれがディアウスの築きし新生魔王城なのだろう。

 我の魔王城よりも大きく見える。正直悔しい。


「こっちに来てくれ。元々あの建物は天界の機能を集中させていた塔だから入り方は知っている」


 神の案内に付いていくと、地下へと続く道にたどり着いた。

 天界において地下と呼称していいのかはわからないが。


「ここから城の地下に入れるはずだ」


「よし、ここからが本当の闘いだな。皆行くぞ!」


 今一度覚悟を決め、我らは地下通路へと入っていった。

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