EP3 新生魔王軍との戦い

第33話 対策会議

「というわけで僕が神です。よろしく」


 神は皆の前で単調な自己紹介を終えた。

 しかし皆はそう簡単には受け入れられないようだ。

 

 考えれば当然のこと。神を自称する者が現れたところで、それを簡単に信じることなど出来ない。


「しかしそう言われましても、信じられませんよ。神であるのならその証明……何か出来ますか?」


「まあそう簡単には信じられないよね。ならこれでどうかな」


 アレキサンダーの言葉を聞き、神は神殺しの剣を大量に生成した。

 我のときと同じく無から取り出されたそれは、紛れもなく彼が只ならぬ者であることを証明する。


「この際僕を協力者として受け入れてもらえれば後は何でもいいからさ。ひとまずこれで信じてもらえないかな?」


「ライザ……この剣」


「ええ。確かに神殺しの剣です。構成している物質はこの世界では見たことが無いので、恐らく本物であるかと」


「よし、ならばお前さんはひとまず仲間だ! しばらくの間よろしくな!」


 イガラシは神の肩をバシバシと叩きながら笑う。

 彼のこういった所を我は気に入っている。

 どんな物であれ寛容に受け入れるのはそう簡単な事ではない。彼は間違いなく魔王軍に必要な存在だ。


「そうは言うけどね……私たちはまだ完全に信用したわけじゃないから」


「アリスの言う通り、全てを信用することは出来ない。ですが強力な助っ人になるというのなら一旦は共に戦いましょう」


 今この場には最初のようなピリピリとした雰囲気は無くなった。

 これもイガラシのおかけだな。


 一通りの自己紹介を終えて、我らは新生魔王軍への対策を考えることとなった。


 一番の問題はその戦力差だ。

 我もアリサも太刀打ち出来なかった新魔王ディアウスが、新生魔王軍を統べるもので間違いはない。

 彼女を倒すことのできる存在は魔王軍には……いや恐らく地上にはいない。

 彼女に太刀打ち出来るのは神ただ一人であろう。


「我らの問題点は戦力差をどう埋めるかだ。何か良い案はあるだろうか」


「ピーーガガガッガガ」


「読み上げます。勇者二人に魔王軍最高峰の装備を持たせてはどうか……だそうです」


「以前のパワードスーツしかり、宝石で作り上げた装備なら可能性はあるか……」


 新勇者であるエレナであれば神殺しの剣も使えるだろう。防御面はパワードスーツでどうにかなるとして……。


 しかしそれで勝てるほど簡単な相手では無い。それは実際に戦った我が一番わかっている。


「案としては悪くはないが、それでも勝率は5割に届くかどうかだ。勇者二人では根本的な戦力が足りない」


「そうか。なあ神様、勇者って今から増やせないのか?」


「残念だが不可能だ。勇者を生み出す機構は天界にあるから、既にディアウスに掌握されてしまっているだろう。神と言っても、僕単体では出来ることは案外少ないんだよね」


 神は自虐気味に最後にそう付け加えた。

 勇者を増やせないとなると、戦士は我々で用意する必要があるだろう。


「僕から提案があるんだけどいいかな」


「何か名案でも?」


「力を貸してくれるかはわからないけど、僕の友人が海底にいるはずなんだ。アイツならディアウスにも太刀打ち出来るはずだ」


 神曰く、古くからの友人が大陸北部の海底に城を構えているらしい。 

 その者は海神を自称しており、実際辺り一帯の海を管理できるほどの実力を持っており今回の戦いにも役立つはずだと言う。


 神を自称する者で本当に大丈夫なのだろうか。

 だが今はその胡散臭い者の手すら借りなければ行けないような非常事態であるため、選り好みは出来ない。

 その者が協力してくれることを願い、我々はその海神の住まう城へと向かった。

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