第2話 幹部会議
「と、いうことなのだ。皆の者、どう思う」
「魔王様が勇者と婚約すると聞いたときは気でも狂ったのかと思いましたよ」
我は勇者の力を利用する考えを魔王軍幹部の皆に伝えた。
最初に口を開いたのは我が一番信頼を寄せているオーガ族の青年アレキサンダーだった。
アレキサンダーはオーガ族の長の息子だ。幼いころから族長の親を見て育ったため、強さだけではなく強い責任感を持っている。戦争において前線でのリーダーを担い、幾度となく勝利を重ねてきた。きっと彼無しで前線での兵の統率は取れないであろう。
「我が何も考えずにそのようなことをするはずが無いであろう?」
「それを聞いて安心いたしました。それでは魔王様のため、全力を持って助力いたします」
「なーんだ。魔王様、勇者とくっついちゃうんだ……。私、魔王様狙ってたんだけどな~」
一瞬、背筋がぞくりとする。彼女はダークエルフのアリスだ。
彼女が私を狙っていたのは薄々気付いていた。繰り返されるボディタッチや、やたらと耳元で囁くように話すのにはもう慣れてしまった。このままではいつか夜這いされていたのかもしれないが、そうなるまえにこの一件が起きたのは不幸中の幸いか。
夜這いをされたところで返り討ちにすることは容易いが、寝込みを襲った者を近くに置いておくことは出来なくなってしまうからな。
「魔王様~なんで私じゃなくて勇者を選んだのよ~」
「勘違いしているようだが、我はあくまでも勇者の力を利用するために婚約を結んだだけだ」
「それは……そうですけど……」
彼女のことも今後の課題だな。放っておけば恋敵である勇者に手を出しかねない。
「いやあ目出たいですな! まさか魔王様と勇者が婚約するとは!」
「いや話を聞いていたのか!? あくまでも力を利用するだけだと言ったであろうが!」
「うわ、また酒飲んでますよ……」
この何も話を聞いていなさそうな者はリビングアーマーのイガラシ。
東の端にある国で亡くなった戦士の霊が魔王軍が開発していた魔導鎧に勝手に宿り、そのまま居ついてしまったのだ。ただ戦士としての能力は本物であり、我も近接戦闘では勝てるかわからないレベルだ。それでも勇者には瞬殺されたのだが。
純粋で快活で、種族も身分も気にせず何者にも分け隔てなく接するところは良くも悪くもと言ったところか。
「まあまあどうであれ目出たいことに変わりはありませんな! うむ、我々一同心を込めて助力いたしますぞ!」
「まあ反対しているわけじゃないし、放っておきましょうよ~」
「イガラシさんに酒を与えた者も後で探さないといけませんね」
幹部の皆も我の作戦に納得してくれたようで何よりだ。今に見ていろ勇者。最後に勝利するのは我々だということを思い知らせてくれる。
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