女魔王、攻め込んできた勇者に殺されると思いきや堕とされてしまう
遠野紫
EP1 出会い
第1話 敗北
我は魔王。魔族を率いて人族を殺し、規模を拡大してきた。だが、やりすぎてしまったのだろうか。人族は「勇者」と呼ばれる存在を生み出し、魔族への反旗を翻したのだ。
そして今、その勇者は我の前に居る。
「アンタが魔王か」
現れた勇者は白髪ショートの女性であり、身を純白の鎧に包んでいる。まさしく魔を滅する者としてふさわしい装備であろう。だが我も簡単に負ける訳にはいかない。魔王としての矜持があるのだ。
「よくぞ来たな勇者よ。ここまでたどり着いたことを誉めてやr」
「ゴチャゴチャ言わずにさっさとヤろうぜ? なあ……」
「な、貴様……」
目の前にいたはずの勇者は我が瞬きをしたその間に後ろへと回り、ナイフを持った手を首に回していた。速すぎる。全く見えなかった。
「もしかして、見えなかったのか? 魔王なのに?」
「そのようなこと、あるわけないであろう? 我は最強の魔王であるぞ。貴様のような人ごときに遅れをとるなど……」
「ふーん。でもこの状況、流石に敵の前で無警戒すぎると思うが?」
そう言われてしまえば言い返すことも出来ない。いったいどの世界の魔王が見えなかったので対処出来ませんでしたなんて勇者に言えるんだ。
「まあなんだ。アンタ、弱いだろ?」
「貴様! ……なぜだ、体が動かん……」
「魔王も所詮この程度か。毒を盛られていることに気付かなかったのか?」
毒……? いつだ。どのタイミングで毒を盛られた。それすらも気づけなかったと言うのか!?
それに魔王に効く毒など、どれだけ強力なものなのだ!
「さて、アンタとこれ以上ヤりあっても面白くも何ともねえ。悪いけど、死んでくれるか」
「クソッ! 動け、我の体!!」
「惨めだな。力の差に気付けず、一方的に殺されるなんて」
我は死に物狂いで体を動かそうとした。だが、少し体を動かすくらいしか出来ない。
我はここで終わるのだ。全く手が出せず、一方的に、容赦なく殺される。
……そうか、我が今まで人族に行ってきたこと。それこそが今、我が置かれている状況と同じ、一方的な蹂躙というわけか。
意識を失う寸前、体を動かした際にずれた仮面が外れ、地に落ちた。
「な……アンタ……」
瞼を閉じ意識を手放そうとした瞬間、抱き上げられる間隔があった。そして、唇に柔らかい感触が……口移しで何かを飲まされたのか……。
「なあアンタ、私の女になれ」
「……え?」
この勇者、今なんと言った?
「アンタは美しい。ここで殺すのはあまりにも惜しい」
「待て。我と貴様は、魔王と勇者だ……。絶対に相いれない存在なのだぞ」
「良いんだよ。私がアンタと一緒になりたい。それだけだ」
「人族も魔族も、絶対に許さないはずだ……。それでも良いのか」
「許す許さないも何も、魔王と勇者だぞ。誰が止められるんだ」
……それもそうだ。魔王と勇者が共になれば、力で勝てる者など存在しないだろう。
それは逆に好都合かもしれない。勇者の伴侶として振る舞い、その力を利用する。そしていつか、勇者をも超える存在となり世界を支配する!
なんという計画。我天才かもしれん。
「ならば良いだろう。我が貴様の伴侶となってやろう!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます