鶴と一声
朝焼けがしずかに眠っているので、僕は目を覚ます事を拒否して布団の中でまた瞼を閉じた
シーツが擦れ合う音はなんだかエキゾチックでいてどこか虚しさを孕んでるような気がする
そんな生産性のない思考に勤しんでいると意識は次第にぼやけてきて、気が付けばいつの間にか夢の世界の住人になっていた
目が覚めると僕は妄想の中で王子様になっていた、ここには美しいお姫様が存在しており、僕はこの人と結婚するのだとワクワクしていた
豪華絢爛な場で誓いを立て薬指に指輪を嵌める瞬間に、その妄想は暗転し、消えた
次の瞬間には巨大な猫が家の物置部屋に二匹いて、片方は白くて毛の長い猫、もう一匹は黒くて黄金の瞳をしている
僕は怖かった、白い猫がやけに身体がぐんと長く伸びていてこわかった、何か悪い夢を見ているんじゃないかとハラハラした
世界は何度も切り替わり、漸く誰かが僕を起こしにかかる
それはあたたかな母の呼びかけでも、お姫様が微笑みかけるわけでもなく、ましてや親友などでもない、人工的で無機質なアラーム音が携帯電話からけたたましく鳴り響いていた
シーツが擦れる
僕の夢は砕ける
明らかな現実に意識が冴えた
僕はまた起き上がってのびをする
あああ、また始まっちゃったよ
溜息に絶望する
朝日を受けたシーツが、キラキラと輝いていた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます