16 グヘヘ、美少女ゲットだぜ!


 ハルはしばらくぼんやりしていた。放心ほうしん状態じょうたいというやつだった。


 痙攣けいれんしてヒクヒクと動く体。自分が一体何をされたのか分かっていなかった。ただただ恐怖と向かい合い、それに飲まれ気づいたらこうなっていた。初めてのことで全くよくわかっていない。けれど、これは自分にとって取り返しのつかないことだと感覚的かんかくてきに理解した。


「逃げなきゃ!」


 ハルは自分の心のきずに気づかないうちに、されたことを心に封印し、シジノードのやかたから脱出することにしたのである。




 少し前のこと。レイのコンテナから連れ出されてからのことである。蜘蛛くもの糸でしばり付けられてかれこれ3時間は蜘蛛型のロボット(使途しと)に乗ってられていた。


「助けて」


 という声は、ガシャガシャときしむロボットの足音に紛れてもう届かないものとなっていた。


(どこまで行くんだろう…)


 不安。このロボットが向かう先もそうであるが、その先に何がるのか? 


「私、やばいかも…」


 誰に聞かせるわけでもない、言葉をつぶやくハル。それでも、ロボットはだまってハルを運び続ける。ガシャガシャと鋼鉄の足音をひびかせて。


「んん?」


 そんな、けたたましい足音が消えた。ハルはここで降ろされ、蜘蛛の糸を除去する液体を全身にかけられる。恐ろしいことに、この液体。レイにもらったシャツもかしてしまう。一糸いっしまとわぬ体となる。だから、ハルは胸を手で隠す。最近急に大きくなった胸が両手で隠され、代わりに谷間がくっきりできる。


「そのままシャワーを浴びてください」


 べたべたになった体をシャワーで洗浄され。シャワーを出ると粗末そまつな服が置いてある。


「服を着てください」


 一見すると服なのかどうかも怪しいそれ。四角く細長い布といくつかのひもがついた服である。体の前と後ろを布で隠し前後をひもでくっつける。布が小さいからハルの体の側面の肉はことごとくはみ出していた。


「そのまま奥へ進んでください」


 このディストピランドに選択肢せんたくしはない。だから、アナウンスの指示通りおくの部屋に進むと、ここは昇降機しょうこうきだった。ハルが乗るとシャッターが下りて自動的に上昇を始める。


 シジノードの邸宅はディストピランドの外壁にとって付けたようなみさきの先にある。晴れていれば絶景であるが、今は雲に包まれあたりは真っ白であった。風に吹かれ、揺れる昇降機。長く続く空のかなたに続くレール。彼女の不安を表すようにぺたりと座り込んだ。


 昇降機はハルをゆっくり雲のその先の邸宅ていたくに連れて行く。


 そして、たどり着いた先にいたのは…。シジノードと名乗る男の人だった。


「おっほう! 本当に美少女だぁ」


 レイと同じくまたふくらんでいる。けれど、レイと比べてやたら邪悪じゃあくに感じた。それだけでも不愉快だったが、さらにハルの近くに寄ってきて、体をめるように見ながら鼻息はないきあらく喜んでいる。なんの意味があるのかよくわからないが、本能的に不快感を覚える。


 そして、しまいには体を触り始める。恐怖からなのか、ハルは一歩も動ける気がしなかった。


「あれ、男の子と別れされられてもう絶望しちゃった?」


 そうして、他人の不幸を楽しんでいるような表情を浮かべる、小太りの男。


「じゃぁ、もっと絶望を味わうプレイにしようか」


 ハルの長い髪を鷲掴わしづかみにして、男はいきなり引っ張り上げる。


「痛い!」


 ハルはようやく自分の状況が絶望的な「何か」であると分かってきたのである。しかし、気づいた時にはもう遅かった。

 

「やめて!」


 髪を強引に引っ張られ、せっかく解放されたのにまた手足にかせをはめられ自由を奪われる。


「うぅ…」


「ははは、抵抗しても無駄さ」


 そう言って男は、ハルの服の紐をひとつずつ解き始める。


「あれ、固結びしてある」


 正直、引きちぎれそうなほど細い紐であるが、男は丁寧ていねいかたむすびの紐を外そうと頑張る。


「紐をねじって、押し込むとどんな固結びも解けるんだよね~」


 胸の横の紐が一つ外れ、右の乳がはみ出そうになる。それに対してうまく体をくねらせて抵抗する。腰の紐が外され、男はもったいぶりながらめくろうとする。だから足を必死で閉じて隠そうと頑張った。そうして、ハルの体を包む服は一枚の布に戻っていく。


「さて、あとは肩のところ!」


 肩口でだけつながっているこの布。しかし、それは頼りない二本の糸によって繋ぎ止められているにすぎず、そんな頼りない糸を男は引き抜いてしまう。


「ううぅ…」


 そんな布をあごで何とか押さえつけるハル。


「あ、頑張るね」


 しかし、背中を守るものは何もなく。鼻息荒い男はそのままハルに抱き着き、何もおおわれていない尻の肉をみしだき始めるのだった。


(助けて…レイ!)


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