応援コメント

第一膳『出会いとお茶漬け』」への応援コメント

  •  はじめまして!
     ☆涼月☆様の本企画に参加されている作品を拝読していて、気軽に参加を、とのことで気になって参りました。遅くなってしまいましたが、今からでも参加大丈夫でしょうか……!

    🍁空草うつを
     以下後半部分になります。

    ◆◆◆

     干しエビをご飯と合わせて三角おにぎりに握る。
     フライパンに胡麻油を適量垂らして火を点け、胡麻油の香りが立った所でおにぎりを入れて。両面に狐色の焼き目が付いたら取り出し、その上から醤油と合わせたかつお出汁を流し入れれば、一度おにぎりにして焼くことで香ばしさが増した、干しエビ茶漬けの完成。

     スプーンを持ったまま両手を合わせて、彼女は茶漬けの入った皿に向かって深く一礼する。なんとも礼儀正しい子だ。食べることは即ち命を頂く行為、きっとご両親の教育の賜物だろう。

     ショートボブにしている髪の、顔にかかっているサイドの部分を耳にかけている。薄い耳たぶには華奢なゴールドのピアスが光っていた。日焼けとは無縁であろう、彼女の色白の肌によく映えている。

     恐る恐る、スプーンでおにぎりを割いていく。焦げ目のついた所はカリッという音を発し、そのままスプーンを割り入れるとふっくらとしたご飯に出汁が沁みていく。
     出汁と共に一口大に取ったご飯を、薄桃色の小さな口に運び入れた途端。眼鏡越しに瞳が大きく見開かれ、キラキラと輝きだした。

    「おいひぃ……今まで食べたお茶漬けの中で、ダントツでおいしいです!!」

     まだ腕は鈍っていなかったと、ほっと胸を撫で下ろす。思ったよりも緊張していたのは、久しぶりに人様相手に料理を振る舞ったから。

    「口に合って良かった」

     それからは、ぱくぱくと尋常でないスピードでお茶漬けを食べ進め、あっという間に皿は空っぽになった。

    「ご馳走様でした。あぁ、満腹満腹……」

     お腹をさすり、ご満悦の様子。緊張の糸がとれた私は無意識に止めていた息を吐き出す。皿を洗おうとのばした腕を、彼女の手が掴んできた。

    ◆◆◆
     後半部分の続きはは以下のページにて公開しました。

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862794085100/episodes/16816927862794104354

     よろしくお願い致します。


  • 編集済

    ご無沙汰してます!
    ご連絡ありがとうございます(๑˃̵ᴗ˂̵)

    1の残りも書く気満々なんです!

    🌱🌱🌱

    「はぁーーー食ったー!うまかったー!」

    彼は私が出したお茶漬けを米粒ひとつ残さず、いや、出汁一滴残さず食べきり叫んだ。

    「生き返ったー!死ぬかと思ったー!」

    さっきまでは確かに正座していたと思うのだけど、今は堂々と、そりゃあ堂々と、センターテーブルから両足を投げ出している。

    ……あれ?
    さっきまで小さく小っさーく見えていた男はどこにいった?
    捨てられた犬みたいな、借りてきた猫みたいな、庇護欲を掻き立てられるような雰囲気はどこにいった?

    視線に気付いたのか、彼はニョキっと立ち上がる。ニョキって言葉がピッタリなくらい高身長。
    おかしいな、アパート横の植え込み前にしゃがんでいた時も、部屋に引き連れてきた時もデカいと思わなかったのに。

    「お茶漬けって言うから、料理出来ない人かと思ったけど、汁がとにかくうまかった」

    しる……。出汁な!
    いや、それよりも。
    ニョキっと立った彼は、手にお茶碗とレンゲを持ってシンクに……あ、洗う?
    あ、洗った!ほーー洗い物できるのか。

    じゃなくて!

    私が拾ったのは犬でも猫でもない。宇宙人でもない。洗い物もちゃんと出来る成人男性だったようだ。

    しかも、さっきまで全く注目していなかったけど、見事なモデル体型。
    脚長っ。顔ちっさ。
    その割には背中にも腕にもバランスの良い筋肉が上手いことついている、ように見える。
    ボサボサかと思った長めの髪もパーマだ。
    オシャレなボサボサか。

    暗闇で見えなかったとは言え、空腹の人を保護するのに夢中だったとは言え、こんな夜に洗い物の出来る見目麗しい成人男性を連れ込んで、ご飯食べさせて、食べ終わって、今……もしかしなくても二人きり?

    男性を部屋に入れるなんて、3年前に水漏れで大家さん(65)を入れたの以来じゃないか!

    「助けてくれたお礼に、なんでも言うこと聞くよ」

    黙りこくったまま視線をぶつける私が、何かやらしいことでも考えていると思ったのか、じりじりと近付きニコッと笑う。

    ち、違う!断じて違う!

    捨て犬やら猫やらを無視なんて出来ない、ただの成人女性(恋愛からはしばらく遠ざかってます☆一人がラクチン37才)なんだー!!

    🌱🌱🌱


  • 編集済

     皆さまこんにちは! 奥森 蛍です🐛(←マークこれです)
     遅ればせながらこっそり参加します。
     ハーフ&ハーフは以前何作か拝読しましたが、参加するのは初めてでして。どきどきしつつ、飯テロ。メニュー考えるの楽しいですね! 
     関川さん運営お疲れさまです(=^ェ^=)
     
           🐛 🐛 🐛

     彼女の指先がそっと漆塗りの箸へとのびる。空気を振るわす緊張感に生唾を飲みこんだ。

     彼女は冷たい箸を胸元にかかげ、まるで祈るようにそっと瞳を閉じる。

     美しすぎる横顔は凪いだ海を思わせる、そこへ一滴の神の雫のごとき麗しい雨粒がつうっと垂れた。


    ――彼女の涙だった。


     腹を空かせて傷ついた彼女は今一膳の飯に感動している。長い間料理人をやってきたが、これほどに感動してくれる人は珍しい。それだけ飢えていたのだろう。

    「食べてよ」

    「ハイ」

     彼女は涙をふいて箸を左手に不器用に持ち、右手の白魚のような指をそろえて椀の側面に添えた。
     茶碗八分目によそった麦飯のくぼみで全卵が煌々と光っている……


    後半の続きは自作品で。
    『ー飯テロ革命、傷ついた訳あり彼女に一膳の飯をー』

  • お邪魔します。
    とても楽しそうな企画で、実は前々から気になっていたんです。
    今からでも飛び込み参加って可能でしょうか?
    よろしくお願いします!

    🐚洞貝渉

     渋い香りと甘ったるい香りが、絶妙に混ざることなく、かといって喧嘩するでもなく。
    「お茶、漬け?」
    「そう、お茶漬け」
     にっこりと笑うその人は、なんの躊躇もなく“お茶漬け”に箸をつける。
     割れた饅頭から、ことさら甘いあんこの香りがした。

    「おいしいですか?」
    「うん、おいしいおいしい」
     心底幸せそうな顔でその人は“お茶漬け”をさらさらとかっ込んだ。
     嘘偽りなく、本当においしいらしい。
    「ラーメンにチャーハン、焼きそばにお好み焼き、そして白米には饅頭、だよね?」
    「はあ……」
    「んー、まさに背徳の味、炭水化物爆弾バンザーイ!」
     なぜか楽しそうに、その人は笑う。

     私の腹はさっきから鳴りっぱなしだ。しかし、どうも箸を持つ気にはなれない。
     目の前には、冷や飯に饅頭を乗せ、ほうじ茶をぶっかけた“お茶漬け”が鎮座している。
    「お茶、漬け……」
    「そう、お茶漬け」
    「おいしいのですか?」
    「うん。おいしいおいしい」
     このやり取りは何回目だろうか。
     結局のところ、空腹なのだ、私は。
     そして、目の前にはもてなしの食事がある。
     いい加減、覚悟を決めるしかない。
     
     私は決死の覚悟で箸を持つ。
     白米の上に乗った、ふやけた饅頭を二つに割って、そっと、白米と一緒に口に含む。
     あんこの甘みのすぐ後にほうじ茶の香りが鼻を抜け、饅頭の皮のふにゃりとした食感と米特有のもちもちした食感が仲良く口の中を占拠した。
    「……?」
     初めての食べ合わせのはずなのに、どこか懐かしくて。
     その懐かしさの根源を見つけるべく、私は“お茶漬け”をさらさらとかっ込む。

    「お粗末様?」
     気づけば、その人が私を優しい眼差しで見つめている。
     いつの間にやら、私の茶碗は空っぽになっていた。
    「ごちそうさまでし……あっ!」

     そうだ、この味、あれだ!
    「おはぎ……」
    「ん? おかわり、いる?」
    「あ、いえ、大丈夫です」
    「そう? 案外悪くなかったでしょ? ま、次はもっと栄養あるものたらふく食べさせてやるからさ。遠慮なくいつでもおいで?」

     その人はいたずらっ子のようにニヤリと笑った。


  • 編集済

    はじめまして。初参加の
    🐤小烏 つむぎです。

    右往左往して、先輩方のアドバイスでやっと参りました。
    前半も加筆していますので、最後にリンクを貼らせてもらいます。

    以下は、後半です。

    **********

     「ちょっとは腹が落ち着いたかい。」 

    アタシは、コトリと茶碗を置いたその子に声をかけた。

    今は薄汚れたナリだけど、箸の使い方は綺麗だ。どっかいいとこの坊っちゃんだったに違いない。

    “イチ”はこちらを見て、キチンと頭を下げた。



    「お前さん、どっから来たんだい?」

    「…箱館。」 

    「箱館かぃ!」

    こりゃ驚いた。そりゃずいぶんと遠い海の向こうじゃないか。

    蝦夷では春になってまたぞろ戦いくさが起こってるともっぱらの噂だ。

    どうせ答えちゃくれないだろうから、詳しいことなんざ聞きゃしないけどさ。おおかた戦を避けて逃げて来たクチだろう。



    「で?この先どうするかアテはあるのかい?」

    膳を下げながらの問いに、子どもは何か答えたが良くは聞き取れなかった。

    深くうつむく姿にアテはなさそうだとアタリをつける。

    まぁ、頼られたところで場末のヨタカに何かしてやれることなんざないけどさ。



    「“イチ”。着替える気はあるかい?」

    そのとたん“イチ”はぎゅと薄汚れた着物の襟をぎゅっと握り込んだから、

    「あ、嫌ならいいんだ。昔の男の着物があるからさ。

    持ってきなよ。そのまんまじゃ怪しいことこの上ないよ。」



    「かたじけない。」

    “イチ”はそう言って頭を下げた。

    ああ、この子はしっかりした子だよ。

    この後のことがアタシは心配になってきた。



    「これはさ、独り言だからさ。聞き流しとくれ。

    『客』から聞いたんだけど、川越ってとこ、知ってるかい?

    いや、聞いてんじゃないよ。川越ってとこが、ここから、そうさな二里ほど先だろうか。川越ってとこがあるんだけどさ。

    今人手が足りなくて、人足を探してるんだってさ。」



    “イチ”が少し顔を上げたから、アタシは慌てて言いつのった。

    「ただの噂じゃないよ。

    そこのまとめ役がそう言ってんだから。

    本当のことさ。」

    “イチ”がじっとこちらを見た。

    「大きな町だし、子どもが一人混じったって誰も気がつがきゃしないよ。」



    「かたじけない。」

    掠れた声で“イチ”が言った。



    その夜“イチ”は壁に寄りかかって眠った。

    何かあった時にすぐ逃げられるように。

    アタシはやるといった昔の男の着物をその肩にかけてやり、残りの冷飯で小さな握り飯をこさえて、足元に置いておいた。



    翌朝、“イチ”は消えていた。

    着物も握り飯もなくなっていた。

    つっかえ棒が外されきちんと閉められた引き戸を見て、アタシはクスっと笑った。



    ちょっとタレ目のしっかりした顔つきの子だったよ。

    *********

    加筆した前半と、後半のおまけ情報はこちらです


    https://kakuyomu.jp/works/16816927862577875744

    やっとできた!
    アドバイスくださった皆様、本当にありがとうございました!

  • ♪一帆です。
    今回も、ハーフ&ハーフ2~飯テロ編~に参加いたします。よろしくお願いします。

    個人作品で参加しまーす。
    お題もちょこちょこ変えながら回答を書いていく予定です。周回遅れにならないよう頑張りまーす。コメントも遅いですが、お許しください。


    ♪♪♪♪♪

    ―― さて、いっちょやりますか!

    私は、ふうっと大きく息を吐くと、出しっぱなしになっていた芽花椰菜を細かく刻み始めた。トントントンと包丁がまな板をたたく軽い音がして、私の気持ちも楽しくなってくる。


     「ご飯が足りないから、芽花椰菜でご飯粒マシマシ大作戦!!」



    包丁を持ち上げて、大きく宣言!!

    ♪♪♪♪♪

    続きは、「妖術士見習いは愛を学びたい」

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862494687766



  • 💐涼月💐です!
     
     遅ればせながら今年もよろしくお願いいたします。
     初めての方もたくさんいらっしゃるようで、楽しみです。
     個人の作品欄で公開されているかたには、作品応援コメントの形で感想を書かせていただきます。コメント欄のみの方には、後ほど関川さんの近況ノートの方へ一口コメントを書かせていただく予定です。
     よろしくお願いいたします。

     私は今回も個人作品として投稿します。最初の数行だけ、こちらへ載せて、続きは作品ページへとURLを張らせていただきます。


     💐💐💐

     黒耀色の美濃焼の茶椀に、味噌焼きおにぎりを載せる。
     その上に柚の皮、シソの葉と焼きのりを少々。
     ストック出汁をさっと温めて、ひたひたになるくらいかけたら出来上がり!

     焼き味噌おにぎり茶漬けの完成だ!

     続きは下記へお願いいたします(#^.^#)
     https://kakuyomu.jp/works/16816927862602812315/episodes/16816927862602837108
     

  • 遅ればせながら、参加いたします!
    みなさんのコメントはまだ読めていないのですが、とりあえず自分の分の投稿を。
    よろしくお願いいたします!
    🍻

     小ぶりの茶碗に盛られたお茶漬けを前にして、お腹は相変わらずグゥグゥ鳴っている。なのに少年は遠慮しているのか、膝の上で拳を握ったまま手を出さない。

     細かく刻んだ野沢菜にしらすの旨味と胡麻の香りを和えた常備菜。このまま食べてよし、チャーハンにしたり豚肉と炒め合わせてもよし。何より緑色が綺麗なので、食卓の彩りに役立つ。これでも元料理人、一人きりの食事でも、つい見た目を気にしてしまうのだ。
     さて、その上にカリカリに焼いて小さく切った油揚げ。そこへだし醤油をちょろっとかけたら、香ばしいほうじ茶を。
     冷蔵庫のありあわせで作った油揚げ茶漬けだけど、美味しいんだぞ。是非あったかいうちに食べてほしい。

     レンゲでひと匙掬い、ふーふーして口元へと運んでやる。

    「ほら。どうぞ」

     遠慮がちにひとくち食べた瞬間、少年の目がカッと見開かれ、爛々とした視線を向けてくる。うん、美味しかったのね。

     ふたくち目。今度は自分から身を乗り出してレンゲに食いついてきた。
     目を閉じて、いっぱしに何やら納得したような表情で頷きながら噛み締めている。思わず吹き出しそうになったが、堪えた。油揚げのサクサクと野沢菜のシャキシャキした音がこちらにまで聞こえてくる。味を想像して、こちらまで唾液が溢れそうだ。

     少年は早くもテーブルに両手をつき、口を大きく開けて待ち構えている。流石に「ンフッ」と笑ってしまったが、相手は気づいていないようだ。最後のひとくち。
     両手を頬に当て、鼻から「ふ~ん」と息を漏らし幸せそうにもぐもぐしている。


    「……美味しかった、です」

     金色の瞳をキラキラさせながら、少年は名残惜しそうに空の茶碗を眺めている。

    「それはよかった。他の味もあるよ。おかわりするかい?」
    「いいの?」
     明るいブラウンの髪の下で、少年の耳がピクッと震えた。

     キッチンへ戻って新たな油揚げを香ばしく焼きあげ、おかわりを作る。今度は角切り椎茸の甘辛煮でいってみようか。生姜風味で牡蠣醤油の旨味たっぷり常備菜。刻み海苔も載せちゃおう。

     2杯目のお茶漬けを頬張った少年は、うっとりと目を瞑り幸せそうに堪能している。ふわふわの髪から飛び出したもふもふの耳がピコピコ揺れて、ハーフパンツの裾からふさふさのしっぽまで出してブンブン振っている始末だ。



     ───やっぱり、狐には油揚げだな。


    🍻

    続きはこちらになります↓
    「ハーフ&ハーフ 参加作品集」https://kakuyomu.jp/works/16816452220246177194/episodes/16816927862567426981
    よろしくお願いいたします。

  • ☆☆☆ 愛宕 ☆☆☆

     目の前に茶漬けが出された。

     湯気から伝わる刺激的な香りに、空腹の胃袋がびっくりし過ぎて穴まで開いてしまわないだろうか。いやいや、いくら子供の体になってしまったからと言って、そこまで軟弱ではないだろう。俺は木製のスプーンを持ち直して、薄く緑色に染まったご飯を掬った。

    「珍しいだろ? グリーンカレー味だよ」

     ほう、これは面白い。グリーンカレーのお茶漬け。
     いいじゃないか、いいじゃないか。
     昔からお茶漬けとは言えば、海苔、梅、鮭など、和のイメージを持ったものばかりだったが、まさかのエスニックで勝負した商品が存在していたとは驚きだ。それを見つけた君にも驚きだ、関川くんとやら。

    「熱かったかな? それとも辛すぎたかな?」

     熱い、そして辛い。
     しかし、ここで声を出すわけにはいかない。俺は独身を謳歌するサラリーマンだったはずだ。それが今、訳ありの少年に身を宿し、関川くんとやらに拾われて飯を食わせてもらっている。どうしてこうなったのか……それを知るまでは、気軽に口を開くものではない。だから俺は、目をいっぱいに見開いて、このグリーンカレー茶漬けの凄さを表現した。関川くんも「うんうん」と満足気だ。

     それにしても、このグリーンカレー茶漬けは美味い。
     口に入れた途端に辛さが広がり、奥歯のさらに奥へと熱が伝わっていく。従来の梅や鮭などのお茶漬けでも入っているアラレがまた、茶漬けらしい存在感を出しているではないか。アラレの無いお茶漬けは、お茶漬けにあらず……来ったぞ、来たぞ、アラレちゃん。

    「もっとゆっくり食べなよ。胃に悪いぞ」
    「…………」
    「なんだか、子供とは思えない食いっぷりだなぁ」

     そう言われても……お茶漬けは流し込むものだ。
     しかし、あまり豪快にがっつくのも怪しまれる。俺はペースを落として、辛さで染み出る鼻水を抑えながら食べ続けた。

     ――ごちそうさまでした。

     言葉には出さず、両手を合わせてお辞儀した。本当なら声を大にして美味さを伝えたかったが、今はこれで勘弁してくれ。

     グリーンカレー茶漬け。
     なかなか良いアイテムを見つけた。元の体に戻れたら、家でもストックすることにしよう――。

    【第一膳 出会いとお茶漬け】

  • 関川さん、こんにちはー。春川晴人です。🌞マークを使おうと思います。

    🌞🌞🌞

    「困ったな」

    ぼくは衰弱しきったその老犬の口元に、よく冷ましたお茶漬けを運んだ。

    もう、自力で飲む力も残っていないのか? どうすればいい? たった一口でいい。どうにかして口に入れてあげたい。

    その時、昔の彼女が買い集めていた注射器型のスポイトの存在を思い出した。香水が好きな子で、たくさん持ち歩きたいから、と香水を詰め替えるために買いあさっていたのだ。

    長らく放置していた引き出しを開けると、未使用のスポイトがいくつか出てきた。

    すっかり冷めてしまったお茶漬けをすり潰して手ぬぐいでこすと、少し濁った水が出てきた。それを注意深くスポイトで吸入すると、危なくないように針の部分は取り外した。

    「はら、口を開けて?」

    ぼくはこの子に生きて欲しいと思った。子供の頃飼っていた犬を思い出したからだ。どうしてこの子がこんな姿になって行き倒れていたのか、それを思うと胸が痛くなる。

    お茶漬けは少しずつ、老犬の口の中に染み渡り、やがて、貪るように飲み干してしまった。

    固形も食べられるだろうか?

    お茶漬けの入ったお椀をその子の食べやすい高さまで持ち上げてあげると、半分自由がきかなくなった体を必死に持ち上げて食べてくれた。

    よかった。なのに、どうしてだろう? 涙が止まらなかった。

    おしまい

    ※悲しい物語になってしまってすみません。もし、あっていなかったら削除してください。

  • こんにちは。初めての参加です。よろしくお願いします。
    名前マークは📞久里琳。琳→リン♪→📞です。こんな感じでよいでしょうか?
    さて、後半は以下に。
    ***
    彼がどうしてそんなにやさしくしてくれるのか、ぼくにはわからなかった。
    ぼくに与えられるのはたいていが臭い、汚い、みっともないって言葉で、そこへたまにかわいそうって言葉とともになにか食べるものが加われば、ぼくはその日を生きのびることができたのだった。

    家のなかがこんなにあたたかいなんて、いままで想像もしなかった。
    焼けこげた家の梁の下にいたって雨は容赦してくれない。爆風に軒並みなぎたおされたあと一枚っきりのこった壁も北風を押しかえすにはかよわすぎた。あんまり寒くて雪の夜にはたき火の火のなかにとびこんでしまおうかなんて思ってたのに。

    目のまえに置かれたスープはお米が入ってて、湯気といっしょにふしぎな匂いをたてている。なんだろうこれ。はじめて見る食べものだけれどとにかくごはんだ、それでおもいだした、もうふつかも食べてないんだった。いや三日だったかな、おぼえてないや。きのうっていつのことだっけ。

    皿をもちあげたらあっつあつに熱くておもわず落っことしそうになってしまった。「あっ」てみじかい叫びがあがって、声のした方を見たら、男のひとがまぢかでぼくを見てるのと目が合った。かれはおっかなびっくり笑顔をつくった。ぎごちないけど、わるい考えはその下にないんだってなぜだか思った。おとながなに言ってきたって耳をかしちゃだめだ、ってのは町の孤児たちの合言葉みたいになってて芯まで染みついてるのに、そのひとの不器用な笑顔は世界にひとり立ち向かうため不信と警戒心で築いたなけなしの防御柵をさあっと吹き散らしてしまった。

    かれの視線はぼくからスープに移って、それからまたぼくの方に戻った。視線にうながされるように、ぼくはもいちど皿をもちあげ、注意しながらスープを口にした。うす味のスープにごはんはほどよくふやけて空っぽのぼくの胃ぶくろにもやさしかった。びっくりしたのは赤い実だ。しょっぱくてすっぱくて、ひとくち齧るともうほかの味がふっ飛んでしまうほど。でもヘンなのに不快じゃない。不快どころかその味が口から去るとさびしくてすぐまた欲しくなる。それでまた齧るとこんどはスープが欲しくなる。どんどん食がすすむ。あっという間に食べきると、空の皿をぼくから取りあげて、男のひとはキッチンに向かった。せなかを見てるうちまたいい匂いがしてくる。お皿にスープがそそがれる、湯気がたつ、香ばしい匂い、それからあの赤いすっぱい匂い。ぼくの食べっぷりはかれにつつぬけだったようだ。二杯目のスープには、赤い実がみっつも入ってた。

    二杯目をたいらげると、ぼくは急にねむたくなってきて、テーブルに顔を伏せて目をとじた。おなかは満たされ、部屋はあったかい。もう死んだっていいや。ちがうな、それは今朝まで考えてたこと。このまま雪に埋もれて死ねればいいやって思ってたんだった。でもいまはちがう。こんな美味しいものがこの世にあるなんて、それがぼくの口に入るなんて。またこんなのが食べられるのだったら、まだもうすこし、生きててたいな。


  •  ぼさぼさの髪を伸ばした彼はそっとれんげに手を伸ばして、湯気が漂う琥珀色のつゆに埋もれた白米をすくいあげて頬張った。

     一口目をおそるおそる食べて目を丸くしてから、続けて何度も芳醇な魚の香りが染みたごはんを口に運ぶ。
     どうやら気に入ってくれたらしい。その様子は伸ばした髪と無精ひげも相まって、長毛種の犬が餌にぱくついているようだ。

     魚介系の出汁に鳥ガラの素を少しブレンドしたあっさりしたスープ
     脂がのった鮪の切り身に火を通して葱を刻んだ薬味を添えてみたのだが、我ながらいい出来だと思う。
     ほのかな塩味と鮪のうまみが食欲をさらにそそり、体を芯からあたためてくれる。
     お腹がふくれて人心地ついたところで、はじめて彼は言葉を発した。

    「美味しかった……です」
    「それは良かった」

     目の前の青年にどんな事情があって行き倒れていたのか知らないが、こうして人を喜ばせることができたのなら自分の料理にもまだそれだけの価値はあるのだと思える。ふと、わたしは何とはなしに身の上話を語っていた。

    「こう見えてもわたしは料理人になるのが夢だったんだ。地元の京都で店を構えたまでは良かったのだけれど……。客足はなかなか伸びてくれなくて、閉店するしかなかった。ところで、君はどうしてそんな生活をしていたのかな?」

     わたしが質問を終えるや否や、青年の体はまばゆい輝きを放ち始めた。
     驚いて言葉を失う私の前で彼の姿は狩衣を纏い、袋を背負った高貴な雰囲気を放つ美丈夫へと姿を変える。また右手には打出の小槌を持って、頭には頭巾をかぶっていた。

    「ま、まさかあなたは大黒様?」
    「……はい。といっても分霊された小さな神社の主でした。それでも願われれば健康長寿に家内安全はもちろん、三代先まで財を成すほどの商売繁盛も叶える力を持っています。しかし信仰が薄れた昨今、祀られていた祠があった土地が外国の企業に買われてつぶされたために居場所を無くしてしまったのです。それで仕方なくあの姿に身をやつしてさまよっておりました」

     なんと、福の神様だったとは。料理の話だけに美味しい展開が飛び込んできたものだ。
     「お茶漬け」が体だけでなく懐具合まで温めてくれるきっかけになってくれるわけだ。私が心の中でそんな風にほくそ笑んだところで彼はくるりと背を向けた。

    「でも歓迎されていないようなので帰ります」
    「確かに京都の人間だけどそういう意味で出したんじゃないよ!?」

    ❄️ ❄️ ❄️

    ❄️雪世明良です。
    初めての参加になります。よろしくお願いします。


  • 編集済

    🎐風鈴
    🎐これを使いますw(#^.^#)
    宜しくお願いします!
    残りのお話は、以下に ↓ ↓

    ***

    「えっ?これがお茶漬けですか?」
    「やっと喋ったか、小僧」
    「ただのお茶漬けとか、そんな事を言うからさあ」
    「ほれ、騙されたと思って、食べてみ!」
    「騙されてるけどね、もう、いただきまーす!」
    「どや?作った時間は、茹でた時間プラス30秒だからね、これ!」

    「はぐはぐはぐっ!うううむむううう!」
    「はい、お水!!」
    「うんぐうんぐうんぐ!はーーー!超絶おいしい!」
    「そうか?おまえ、良いもん食ってねーな(笑笑)。まあ、オレもだけど」

     オレが作ったのは、配給された乾燥パスタ500グラムを茹でて、それに○谷園のお茶漬けの素(梅)3袋(2袋でも可)、オリーブ油大さじ2杯半、大葉(青じその葉)10枚前後の細切りを混ぜ合わしたものだ。

    「米やお茶っ葉は、もう無いからな。それで不要になって眠っていた○谷園と庭の青じその葉っぱで、何とかお茶漬けにしたという訳だ。頭良いだろ?」
    「うん、天才だね、おじさん!大葉の香りが凄いね。僕、大葉はちょっと苦手なんだけど、大葉の味はしなくて、普通にウメ茶漬けの味がするね。梅干しは大好きだから、なんか懐かしくて、いくらでもイケちゃうよ!」

    「まあ、イクラは入っていねーけどな」
    「えへへへ、ウメだけに、うめーシャレだね!」
    「小僧、はなしがわかるじゃねーか!」

     ――――小僧は、オレの二倍も食べやがった。ウメ茶漬けの味だとか、当たり前じゃねーか、それしか味をつけてねーからな。

     こんなに喜んでくれて、オレは久しぶりに料理人の気持ちを思い出していた。
     小僧とは、その後、秘蔵の日本酒を飲み交わしながら、お互いの好きな料理の話をした。好きな料理って、結局は日本の家庭料理だけど、それはオレ等が日本人である事の証明だ。

     翌日。
    「1佐(いっさ)! 御命令通り、あの若者を国外へ避難させました!」
    「よし、それでは、我らは、本日、まるきゅーまるまる(09:00時)を以て、例の迎撃戦を開始する!オレ等の最後の意地を見せてやるんだ!そう簡単に首都を落とさせてはやらねーからな!」

     ――――オレが死んでも、あの小僧が日本の味を、日本の心を引き継いでいってくれるさ。最後の晩餐、ありがとうよ、小僧!



    ***

    世界の平和をお祈りいたします!

  • こんばんは。今回も蒼翠の🍏で。よろしくおねがいします!
    では早速、飯チラリズムを。

    🍏🍏🍏

    ……

    「おい、オマエ。アレルギーとかないだろうな」

     返事はなかった。 
     わかっている。私の口をついて出てくる言葉は乱暴だ。自他ともに認めている。初対面の相手だろうが関係ない。誰に対しても同じように接しているだけで、いつものことだ。

     少し首を横に振ったように見えたし、好きに解釈する。狙いすましたように炊きあがった白飯を茶碗に盛り、焼きたてのたらこを厚めにスライスして乗せる。その横には昆布の佃煮を添え、最後に気休め程度に白ごまを散らす。
     これで完成だ。

    「食い物を無駄にしたら、承知しないからな」

     うつむきがちな少女の前にトレーを置いて、口から出た言葉がこれだ。
     ああ、と自分でも思う。だがこれで良いのだと、その言葉を咀嚼する。

    「俺が用意したものは美味いに決まってる」

     当たり前のことは当たり前のように言うものだろう。
     茶碗と白磁の土瓶。琵琶を模した赤膚焼の箸置き、そして一口サイズに切った沢庵を二切れ添えた豆皿。それまで身動きしなかった少女がトレーに並ぶそれらを視界に入れたのを見計らって、土瓶から茶碗に出汁を注いだ。そう。だし茶漬けだ。
     途端、少女のお腹が『いただきます』を告げた。確かに聞こえた。

     それからはまあ、予想通りだ。少女は温かい出汁にほぐれた炊きたてのあつあつご飯をハフハフともどかしそうに口に運ぶ。時にたらこと共に、時に沢庵を齧り。
     私はというと一旦カウンターの内側に戻り、少しばかり冷ました湯を急須に注いでいる。中で程よく茶葉が開いているのを確認してから湯呑とともに運ぶ。少女の向かいに腰を下ろすと、不意に少女の手が止まった。

    ……

    🍏🍏🍏
    飯チラの全貌は『異都奈良の琥珀食堂』にて。
    https://kakuyomu.jp/works/16816410413893461604/episodes/16816927862375452733

  • 🐹黒須友香です、こんばんは。今回もよろしくお願いします。
    前回は🌰でしたが、今回は🐹でお願いします。

    🐹

    突然だが、五分前の自分を問い詰めたい。

    「ワイは何してくれちゃったんや?」

     おひとりさま用のちっこい折り畳みローテーブルの上に、プルプルと震えている物体がひとつ。
     まるで、カビた食パンをちぎって丸めて団子にして、さらにハエがブンブンたかっていると言っても過言ではない形態だ。

    「なしてこな生ゴミが、ワイの部屋に」

    「生ゴミちゃいます、ハムスターです……」

     ハムスターとな。しかも喋った。

    🐹

    続きは↓こちら!
    https://kakuyomu.jp/works/16816927862423037971

    今回は自分とこのオリジナルキャラでお送りします。
    よろしければのぞいてみてくださいね♡


  • 編集済

    【4月16日追記】
    登場人物に名前をつけました。
    少女→紅子
    彼女→美奈

    💎玖珂李奈

    初めて参加させていただきます。よろしくお願いいたします。

    💎

     お茶漬けを作っているひとときは実に楽しかった。
     棚に残っていたパックごはんが役に立った。一緒に暮らしていた元彼女の美奈が買い置いていたものだ。

    「あの、おそれいります」

     わたしが棚を漁っていた時、紅子と名乗った少女が背後から声を掛けてきた。

    「夜分にご迷惑をおかけいたしまして、申し訳ないことでございます」
    「ああうん、気にしないで。たいしたものは作れないからさ」

     小鍋で湯を沸かし、火を止める。そこへ鰹節をたっぷり放り込んだ。
     華やかな香りがふわりと広がり、鰹節がゆらゆらと手を振りながら沈んでいく。
     こうして出汁を引くのは、あの日以来だ。

    「紅子さん、本当にご家族に連絡しなくていいの」
    「はい。お気遣いくださいまして、ありがとう存じます」

     両手をハの字にして丁寧に座礼をする紅子を見て、違和感しか覚えなかった。
     着ている制服からして、この近くにある女子高の生徒だろう。だが、彼女のように古風なお下げ髪をしてこんな喋り方をする生徒など、見たことがない。

     夜中、道端で一人震えていたからつい連れてきてしまったが、名前以外何も事情を話してくれない。
     もしかしたら、紅子は名家のお嬢様で、望まぬ政略結婚かなにかを親に強要されて逃げてきたのかな、なんて想像してみる。そういう世界が現実にあるのかは知らないが。

     美奈が使っていた茶碗にご飯を盛る。つやつやと光りながら甘い香りを漂わせる白飯は、わたしの大好物だった。
     そこに梅干。梅干を見ると、今でも頬の後ろがきゅうっとなるのがおかしくもあり、悲しくもある。醤油を垂らした山吹色の出汁を掛けると、ご飯がじんわりと緩んでいった。

    「食べてみなよ、たぶんおいしいから」

     最後に海苔とひねった胡麻を振りかけテーブルに置く。
     紅子は今までの佇まいが嘘のような勢いでお茶漬けをかき込んだ。そして暫くしてから顔を上げ、口のわきにご飯粒をつけたまま笑顔を見せた。

    「おいしゅうございますっ」

     それを聞いて、自分がドヤ顔になっているのを自覚する。そう。この言葉。これが聞きたくて料理人をやっていたのだ。
     自分の首筋にある、二つの傷跡に触れる。
     わたしは食べ物で人を笑顔にすることができる。だが、わたしが食べ物を口にすることは二度とない。
     それでも。

     あの日。吸血鬼に襲われた美奈を守ろうとして、自分が毒牙に掛かって吸血鬼となり果ててしまった事に、一片の悔いもない。彼女を守ることが出来たのだから。

     たとえその直後、美奈が他の男と逃げてしまったとしても。


  • 編集済

    🌸悠木柚です。今回も宜しくお願いします。


     俺は狭いキッチンで、今さらながら頭を抱えていた。全くもってどうかしている。見ず知らずのガキに話しかけた挙句、家にまで連れてきてしまった。これはもう、仕方がない。(※1)

     捨てられた犬や猫を、見なかったことにはできないだろう?
     少なくとも俺にはできない。

     今は事情があって違うが、これでも元はプロの料理人だ。美味しいものを食べさせたいという気持ちは、今も熾火のように残っている。まぁ……急なことなので食材も限られてはいるが――

    「アレルギーとかあるか? ≪苦手なもの≫とか?」

     返事はないが、少し首を横に振ったのは分かった。だったら、これで完成だ。

    「ほら、お茶漬けだよ。絶対おいしいから食べてみな」

     お腹のグーと鳴る音が、『いただきます』の代わりに思えた。





    「おいしい、おいしいよ!」
    「そうか……それはなにより……だ……」

     俺はそこで力尽き、魂となってゆっくり空へ登って行った。
     元料理人、今は無職。
     それが先程までの自分だ。今は魂だが……って、魂が職業とかカッコいいな。スタンド出せそう。

    「おいちゃん、どうしたのさ、おいちゃん! しっかりして!」

     何度も言うが、さっきまでの俺は無職だった。金がない。米と茶葉はあったが、それ以外には何も無かった。だが、お茶漬けには具が必要だ。俺に残されているのはこの体だけ。元料理人として妥協はしたくない。ならば使うしかない、具として。

     ガキに見えないよう、カウンターキッチンの中で右ふくらはぎの肉を柳葉包丁で削ぎ、血抜きなどの下拵えを手早く済ませ、細かく刻んだ肉を醤油とみりんで軽く炒めた。それを熱々のご飯にかけて、お湯を注げば完成。もちろん会心の出来だ。今まで人間の素材で作った料理は、全て会心の出来だった。今回だけ失敗するわけがない。

    「起きてよ、おいちゃん! ……血が、こんなに……!」

     ふくらはぎからの大量出血で、あっけなく死んだが後悔はない。このアジトが警察にバレる日もそう遠くはないだろう。俺はもう逃走に疲れたんだ。最後に、腹をすかせたガキに活力を与えてやれた。こんなに嬉しいことはない。だって俺は、元料理人なのだから。



     fin



     ---------------------

     ※1 主人公ロリコン説勃発。仕方がないどころかラノベ的には事案である。
    「俺はロリコンじゃない。人より小さな子供が好きなだけなんだ」と、自らの性癖を否定する隠れロリコンなのか、「俺はロリコンだ。文句あるか」と、正々堂々世評の荒波に立ち向かう真性ロリコンなのかは、次に続く言い訳、≪捨てられた犬や猫を、見なかったことにはできないだろう?≫からも解るように前者である。


  • 編集済

    🍷出っぱなしです。
    今回もよろしくお願います。

    あれ?
    まさかの一番乗りですか?

    では、回答はこちらです

    🍷🍷🍷

     まずはお湯を沸かし、玄米茶を用意する。
     現在は一人暮らしのわたしには、ティーバッグタイプしかないがこれも悪くはない。

     冷蔵庫に残っていた鮭の切身を魚焼きグリルで両面をしっかりと焼く。
     その間に、ハーブとともにプランターで育てている三つ葉、彩りを添える程度だけ、さっと切り取り、一口分の大きさに刻む。
     焼海苔の表面をガスコンロの火の上を軽く素通りする程度だけ炙ると香りが良い。
     茶碗を2つ出し、白米を先によそい、少し熱を冷ましてやるとより美味しくなる。

     鮭が焼けたら、白米の上に具材とともに盛り付け、以前の仕事の依頼人から頂いた干しアミ(すっかり忘れていて今日まで調味量棚の肥やしになっていた)を出汁代わりに、ひとつまみだけ散らそう。
     味付けは素材の味を活かすために、シンプルに塩だけだ。
     最後にお茶を注いで完成だ! 

    「やあ、お待たせ」

     わたしが在り合わせの具材で作ったお茶漬けをテーブルに持っていくと、彼女はまるで初めて見る不思議なものに好奇心が押さえられないかのように鼻先を近づけている。
     恐る恐るわたしを上目遣いでチラリと見上げると同時に、再びグゥっとお腹が鳴った。
     モフッとしたネコ耳をペタンと倒してわたしから目をそらしてしまった。
     遠慮しているのか、怖がっているのか。

     さて、どうしたものか?

     わたしの質問に反応していたということは、言葉が通じていないわけではないだろう。
     お茶漬けに興味を持っていたし、味覚はそれほど違わないはずだ。
     間違いなく文化圏が違うと思われる。 
     もしかしたら食べ方がわからないのかもしれない。

     それならばと、用意していた箸の代わりにスプーンをキッチン台の引き出しから取り出した。

    「では、いただきます」

     ネコ耳の少女はわたしの様子を首を傾げて見ている。
     わたしは食べ方の見本を見せるようにスプーンでお茶漬けをかき込む。

     ふむ。

     我ながら見事な出来だ。

     ある出来事から、わたしは呑んだくれて荒れた生活をしていたわけだが、程よい優しい塩味が五臓六腑に染み渡る。
     玄米茶の香ばしさに、鮭とアミの海の塩味が上手く溶け込んでいる。
     海苔の磯の香りが母なる海を彷彿させる。
     次の瞬間には、三つ葉の爽やかさが自分が陸上生物だと思い出させてくれる。
     白米という土台は、まさに海と陸を育む母なる地球だろう。
     そして、その全てを溶け込ませ調和させている玄米茶というスープがある。

     この渾然一体とした完璧な世界、それがお茶漬けなのだ!

     少女は、わたしが美味しそうに食べている姿を見て、遠慮も恐怖も上回った食欲でお茶漬けを勢いよくかき込み出した。
     その食べっぷりは見事なものだった。
     それほどまでに飢えていたのだろうか、小さな身体にあっという間に吸い込まれてしまった。

    ☆☆☆

    「……はぁ、どうしたものだろうか?」

     わたしは、ベランダの手摺りに身体を預けながら、シャンパングラスを手にため息をつく。
     中身は、本来は今晩一人で食前酒にしようと思い、近所のスーパーで買った国産スパークリングワインだ。

     食事も終わり、少女は空腹が満たされた幸福感からかすぐに睡魔に襲われた。
     わたしが普段使っているシングルベッドに寝かせている。
     飢えと疲れがどこまで極限状態だったのかは想像するしか無い。

     本来、子供がこのような目に遭うなど異常なことだ。
     こんな世界は間違っている。
     そもそも、この少女のような人外の者がこの世に存在することすら、これまでありえないことだった。
     
     あの日、失われた古代文明が復活した日に、わたしも例外なく世界の全てが一変したのだ。
     原理も理屈も何もかも不明なまま、現在まで時は流れた。

     世界は大きく様変わりし、すべての価値観は覆った。
     すべての元凶は、今も夜空に浮かぶあの巨大な『ムー大陸』だということだけは分かっている。

     わたしは、かつて憧れた伝説の大陸を憎しみに満ちた目で睨みつけた。

    🍷🍷🍷

     以上ですが、個人のページにも公開させていただきます。

     近況ノートで料理とチラッとだけ出たワインも載せておきます。

    https://kakuyomu.jp/works/16816927862486888667