~飯テロ編~本編

第一膳『出会いとお茶漬け』

 まったくもってどうかしている。

 見ず知らずの相手に話しかけた挙句、家にまで連れてきてしまった……


 わたしは狭いキッチンで今さらながら、ちょっと頭を抱えていた。


 これはもう、しょうがないと思うしかない。

 捨てられた犬とか猫を、見なかったことになんかできないだろう?

 少なくともそういう真似は、わたしにはできないし、できなかったのだから。


 しかもさっきからずっとグゥグゥとお腹を鳴らしている。

 本人は恥ずかしそうにうつむいたままだけど。


 となれば、もう作ってやるしかないだろう?


 今は事情があって違うけど、これでも元はプロの料理人。

 美味しいものを食べさせてやりたいという気持ちだけは、今も熾火のように残っている。


 というわけで、それも含めてキッチンで頭を抱えていたわけなのだ。

 まぁ急なことなので食材も限られているし、すぐ出来るものという条件付きだし。


「アレルギーとかない? 苦手なものとか?」


 返事はないけど、少し首を横に振ったのは分かった。

 だったら、これで完成だ。


「まぁ、なんだその。ただのお茶漬けだけどさ、食べてみなよ、たぶんおいしいから」


 お腹がグーと鳴る音が『いただきます』の代わりだった…… 




 ⇒ to be continued

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