第6話 束縛は夜まで続いていく

 放課後になり、恋歌さんは俺に、

「悟史。本音を話せ、私が許嫁で良かったろ?ずっと一緒にいるんだぞ?」

 本音を話したら、恋歌さんは絶対に俺を攻めるよね?


俺はその日に応じて生きていくことにした。

「もちろん。一緒にいれて幸せだよ、恋歌。」


「当たり前だ!お前は私の事が好き過ぎるからな。」

 恋歌さんは俺の言葉に嬉しそうだった。そして朝と同じように引っ付いて離れなくなり、そのまま俺たちは帰宅することになった。


でも、妹は、

「お兄ちゃん。私は知らないよ?そんな八方美人がいつまで続くか…。」

 本気で心配してくれるのは妹のお前だけだよ、純。


家に帰っても、

「服を着替えるぞ、付いてこい。」

 彼女には恥ずかしいとか言う概念はなく、ずっと一緒にいたいが優先される。堂々と目の前で服を脱いで着替えていく。もちろんこっちが恥ずかしくて見ていないと興味を持たない事に対して、キレられる。

(こんなに美人が目の前で着替えているのに興奮しない…。病気かな、俺?)


 彼女は体を鍛えているのだろう。腹筋の割れ目がうっすら出ていて胸は脂肪が無いため小さめだ。お尻まで引き締まっていた。

(女子高生って、こんなんじゃ無いよね。恋歌さんは足の筋肉もバキバキだし、腕の筋肉もスゴいね。これでは、普通の男性は…好きじゃ無いと思う。)


「本当にキレイだね。恋歌。」神秘に近い体だった。


「愚妹の美優は顔だけの女だ。アイツに負けているのは顔の美しさのみだ。」

 美少女の姉…容姿で負けている劣等感がある。だから、恋歌さんは人一倍努力してこの美しい体をキープしているんだ。


「私を選べ!妹の純を見れば分かるだろ、体を鍛えている女は芯の強さが違う。私がライバルと思うのは、愚妹では無く、義妹の純だ。あの義妹は私の蹴りをいとも簡単に止めた。だが、いずれは決着を付けてやる。」


 体を鍛えていると、少年マンガみたいな発想になるのか…。武道で勝った方が、こいつをもらうみたいな。(キュンってしないよ?恋歌さん。)


「裸は見せてやるが、行為は選んでくれるまでしないからな。我慢しろよ。さあ、貴様も早く着替えろ!醜いお前の体も、私のように美しく鍛えてやる。」

 俺は無理矢理、脱がされてラフな運動着にされた。


「夕食の準備が終わったらトレーニングだ。拒否権は無い。付いてこい!」

 束縛の許嫁は体を鍛えるのにも、俺を同行させてくる。


 夕食作りを手早く進めて作り終わったのだが、そのあと家を出ていき、柔軟体操後に約5㎞のランニングをし、帰宅すると、

「トレーニングルームを使うぞ、構わんな?」

 恋歌さんのこの問いかけに、


「恋歌お姉さま、終えたあと掃除と片付けはちゃんとしてくださいね?」

 それぞれ違う時間に部屋を利用しているらしい…筋肉姉妹なのか?


 妹の純は武術マニア。当然、一通りのトレーニンググッズがある。ルームランナーにアブドミナルマシン、チェストプレスマシンなど許嫁のお嬢様、柏野家の財力を駆使し完成した地下室の部屋なのだ。

「私より弱い男では困るからな、今日は死ぬ気で鍛えろ!」

 そのあとボロボロになるまで体をしごかれた。


そのあとはよく覚えていない。トレーニング終了後、恋歌さんと風呂でシャワーを浴びて、勝手に服を脱がされて、勝手に体を洗われて、服を着替えさせられた。

「お前は本当にダメな奴だ、私にこんなマネをさせるんだから…、許嫁だから許してやるが、トレーニング後の体くらいは自分で洗えよ。」

 ボロボロになった俺は動かない体を引きずられ、為すがままにされていた。

(恋歌さんは息ひとつ上げていないぞ、化け物だな。)


「恋歌お姉さま、ほぼ介護じゃないですか。まったく、お兄ちゃんは本当にヘタレだよ。あれくらいのトレーニングで体が動かなくなるんだから…。お姉さまに感謝しなよ?私なら放置するもん。」

 そのあと食事の時間もぐったりしている俺にご飯を食べさせていた。


「恋歌ちゃん、うちのダメ息子がゴメンね。」

 母さんがまったく動かない、俺の面倒を見る義娘に対して謝罪していた。


「お母様、お任せください。私は妻として朝倉家の次期当主を完璧な男にしますから。」

(恋歌さんの完璧とは?俺をガチのマッチョにすることなの?)


俺はそのあと体を引きずりながら、ベッドに行き倒れ込んでいた。

「おい!悟史。勉強の時間が残っているぞ?聞いているのか!」

 かなりの疲労でもう視界がぼやけていた。


「美優の奴め、大事な許嫁をこんな体たらくな生き物にしよって!まあ、明日は美優だからな。私とは違う、厳しさが待っているぞ!」

 (美優は許嫁にここまでしないよ?絶対に。)


「仕方がない。今日はもう休め、お休み、悟史。」

 意識を失う前、その俺の目には優しく微笑む恋歌さんが見えた…。


 ようやく長い月曜日が過ぎ去ろうとしていた。

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