第42話 壊すんじゃない、教えるだけ
いよいよ、サンドイッチが運ばれて来た。
私は卵サンドひとつしか頼まなかったが、サルバドールさんはその後、2個3個も頼んだ。
よほどお腹が減っているのだろう。
「おお、美味しそう...!」
目の前に並んだサンドイッチを見ながら、サルバドールさんは感激していた。
その姿はどこまでも愛おしかった。
そして私は、運ばれた卵サンドを早々に食べ終わる。
目の前では、サルバドールさんがサンドイッチにかぶりついていた。
私はこの間、少し考え事をしていた。
それは、結婚式のことだ。
今日、結婚式が開かれ、国民として祝いに行くとは思ったもののそれは本心ではない。
私はその場で何をしたらいいのだろうか。
私は考えた。今までに聞いた情報を全てかけ合わせて。
そして、一つの案が浮かんだ。
それは、みんなにマリアの本当の顔を教えてあげようというものだった。
私は式をぶち壊すのではなく、あくまでマリアのことを紹介するだけだ、と自分の中で正当化した。
今からしようとしていることは、とてもとても最低なことなのだろう。
だって、親友の、そして片想いをしていた相手の結婚式をぶち壊そうとしているのだから。
でも、それくらいしてもいいじゃないか。思い返してみても、私は理不尽に監獄に入れられているのだ。
その張本人がマリアだってことをほんの少しの雑学披露的なノリで紹介すればいいのだ。
どうなるのかが楽しみだ。
私は1人でにほくそ笑んだ。
私だって負けてばっかじゃ嫌なんだ。
悪意をたっぷり込めた、盛大なサプライズをしてあげようじゃないか。
これで、私が結婚式に行く正式な理由ができた。
それをしたことで、その後どうなるかはわからない。
私はどっちでもいいのだ。もう怖いものなんてない。十分に地獄は見てきた。これくらいの度胸、ついてなきゃ困る。
そうともなれば、後はどう実行するかだ。
私はざっと頭で考える。
さまざまな案が浮かんでは、私自身が審査員の厳しい審査によって落ちていく。
その厳しさが、私の脳をいじめていた。
そして考えついた、それはそこまでぶっ飛んだ発想ではなかった。
正直妥協案になったが、今ある案の中では実に有力だ。
それをするには、あの噴水のお爺さんの協力が必要だろう。
よし。
私は心の中で気合の声を漏らす。
「ふぅーー」
一気にものを考えたせいか、少しクラクラする。
私はコップに半分以上入った水を一気に飲み干し、深く息を吐く。
そして密かに、作戦の決定を喜ぶ。
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