第32話 私を突き動かすもの

私はその目標を達成するため、今すぐに作戦を考える。その急な熱意には隠れた嫉妬や怒りがこもっていた。


とりあえず私は体を起こし、あたりを見渡す。


そこはいつも通りの見慣れた監獄景色だった。


よく見てみると、今までなぜ気づかなかったのかというくらい、汚れや埃でいっぱいだった。


こんな環境で私は何ヶ月も過ごしているという事実にゾッとした。


しかし、住めば都とはよく言うもんで今の私は全く悪い環境とは思っていない。


「あ、作戦作戦」


頭の中の思考が作戦とは別方向に行ってしまったのに気づき、思考を戻す。


まず、その結婚式の場所だが、この館にマリアがいないと言うことは、マルクのお城なのだろう。


直感でしかないが、今ある情報の中では1番有力な考えだ。


私は城の場所を知っている。


そうなればあとはどうここから抜け出すかだが。


都合のいいことに私はミミックとある約束をしている。


マリアの部屋からマルクの写真を持ってきたら、サルバドールさんを解放すると、そしてサルバドールさんと一緒にここから脱出した後、ミミックと住む。


最後の約束は守るつもりはないのだが、サルバドールさんと一緒に出るという約束は全力で守らさせてもらう。


つまり、私はここから出るということがこの館の御子息によって約束されているのだ。


何も恐れる必要がない。


気兼ねなく、ここから出ることができるのだ。


「そうだ!サルバドールさんと一緒に行こう!」


私はわざとらしく言う。なぜか気持ちが舞い上がっていた。


心のどこかでマルクとの訣別のタイミングを探していたのだろうか。


でも、そんなことはどうでもいい。


私はただ結婚式に乗り込んでやりたいのだ。


何がそこまで私を動かしているのかはわからないが、とにかく私は気合十分だった。


そうなれば、今すぐにでもここから出て、会場に向かいたい。


ただ、一つ問題がある。


この館の場所がどこかわからない。


初歩的で致命的な問題だった。


けど、マルクのいる位置から電話がつながるのならそう遠くないはずだ。


少なくともこのクゴンカ王国の中ではあるだろう。


だから善は急げだ。私の今からしようとしていることが善なのかはわからないが、ここから早く出るに越したことはない。


私はミミックから渡された彼の部屋の鍵とは違う方のこの檻の鍵を手に持ち、ゆっくりと手首を捻った。

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