第33話 作戦の一幕目
「とりあえず、ミミックに会わないと」
ボソッと呟き、慣れた感じで地下の廊下を歩く。
何かが吹っ切れたのか、捕まることへの恐怖心は一切なかった。
しかし、捕まっては元も子もないので私は一応、警戒しながら歩く。
以前とは違いスムーズに階段を上がる。
ミミックの部屋がどこか分からないが、私はまず、マリアの部屋があった3階へ行く。
相変わらず、私の足取りは軽い。スキップと変わらないくらいの早歩きで3階に向かう。
3階に着き、早々と右を向き、歩き始める。
華麗にマリアの部屋を通り過ぎ、奥にある部屋に行く。
奥の部屋の扉の前まで来た。
扉の上には、ミミックと書かれている。
私は何も迷わず、ノックをする。
コンコン
空虚に響いた音はすぐさま自分の耳元へ返ってくる。
コンコン
もう一度、鳴らす。
しかし何も返ってこない。
もしかしたら寝ているのだろうか。
窓を見ると外は何一つ邪魔がない真っ黒な世界だった。
「そうともなれば...」
私は何も躊躇せず、ミミックから渡された、ミミックの部屋の鍵を手に取る。
この部屋の鍵を渡したと言うことは、この鍵は合鍵なのだろうか。
そんなことを考えながら鍵の先端を鍵穴に入れ、手首を捻る。
当然、それは噛み合い、小規模な音を放つ。
扉を開けると、そこにはミミックはおらず、サルバドールが1人倒れていた。
なかなかショッキングな景色だが、私はそんなことを気にも留めず、だらしなく倒れたサルバドールの元へ向かう。
体を揺らす。しかし、何も動きがないので、大きく揺らす。まるで何トンもする大石をどかすように。
「はっ!?」
揺らし続けると、サルバドールの意識が戻る。
「サルバドールさん...。行きましょう!」
サルバドールの意識が戻ったことに嬉しさが込み上げてくるが、なるべく押し殺し、目的をものすごく端的に伝える。
「ど、どこなんですかここは!?行くってどこに!?」
急に意識を覚まし、今の状況を見て、サルバドールは慌て出した。
「ここはミミックの部屋です」
当然のように私は言い放つ。
「ミ、ミミック?誰ですか、それは?」
サルバドールはとても不思議そうな顔をしている。そういえばサルバドールはミミックがマックさんに変装していたことを知らないのだ。
私は心の中でハッとする。しかしすぐさま切り替える。
「後で説明します。とりあえず私についてきてください。はやくここから出ましょう」
そう言った私の顔はとても笑顔だった。
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