第27話 近づく足音
荒々しい声を聞いて、私は全身が硬直する。もはや、今から逃れられる術はあるのかというほどに絶体絶命だ。
私は、頭をフル回転させ、この危機から逃れる方法を考える。
その間にもどんどんこちらに向かう足音は速く、大きくなっていく。
タッタッ...タッタッ...
まるで「5...4...3...」とカウントダウンする様に足音は鳴り響く。
もうすぐそこだ。終わった。私の恩返しはあっけなく終わったのだ。
「おい!そこで何してる!」
警備員の必死な怒号が私の耳を突き抜ける。問われた言葉なんてどうでもよかった。それで運命は変わらないのだから。
「はいストップー」
突然、ついさっき聞いた覚えのある声が聞こえてきた。
私は硬直してずっと前を向いていたが何が起きたのか気になり、重い頭を動かして横を見る。
そこにはミミックが怒ったような表情で警備員を睨みつけていた。
「その子を離しなさい」
ミミックが優しく指示をする。母親が自分の息子に注意をするように。
「で、でも。侵入者ですよ!?」
間違いなく正しいであろう自分の判断をこの館の御子息に否定され鍛え上げられた体をした警備員が見た目とは打って変わった、焦った態度を取る。
「いいから。あなたは自分の任された所に戻りなさい。ここは警備対象外のはずです」
なぜ先ほど私にこのゲームを持ちかけたミミックが私を助けているのかは知らないが、彼の顔は至って真剣だった。
「は、はい。すみませんでした」
まだ何か言いたそうな警備員は渋々、元いた一階玄関まで戻る。
私はいよいよ体が楽になり階段から体を出す。
一回玄関には落ち込んだ様子の警備員とさっきまで訪問者の対応をしていたであろう警備員の二人が立っている。
「あの、どうして助けたんですか?」
あまりの奇行に私は恐る恐る聞いた。
「こんなところでしくじられても、私も楽しめません。それと、助けられたことで少し私に情が湧いたんじゃないですか?」
ミミックが冗談めかしく言う。
「そんなわけありません。そもそもこんな目に遭っているのはあなたのせいなんですから」
私は少々冷たい態度を取る。しかし依然、ミミックの表情はにんまりと口角が上がったままだった。
「そうですか。まあ、どのみち私と一緒に住むのは変わりありませんから。気長に待ちますよ」
本当に住むわけないでしょ。私は心の中で呟いた。けど、この男がそれを本当に信じてるとは考え難い。
今までの言動から見ても何を考えてるか分からない。
1番怖いタイプだ。もしかしてマックの格好をしていた時に言った「あなたの敵でもなければ味方でもない」はミミックとして言ったのか?
私はますますこの男に対して恐怖を覚え始める。
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