第26話 覚悟の一歩

「では、楽しい楽しいゲームの始まりです。48時間もあるんです。そう焦らずに」


ミミックは常に笑みを浮かべながら、話す。そして時々サルバドールの顔を確認しては、より口角を上げる。


やっぱりこの一家は全員狂ってるんだ。

この館の主人、ミミックとマリアの父がなぜそんなに大金持ちで、ある程度の地位があるのか私は知らない。


私は絶対にこの家族の人たちとは関わらない...。


「おや、どうしたんですか?そんなところで立ち止まって」


「静かにして!今どう行こうか考えてるの」


「あら、そうですか」


話しかけるミミックに強く当たる。

しかし実際は何も考えていなかった。ただ、見つかるという恐怖の前で立ちすくんでいただけだった。


こんなにもリスクが怖いなんて。私は改めてサルバドールさんやアロクスさ?の凄さがわかった。


「よし...」


私は覚悟を決め、小さく声を漏らし足を動かす。そして、檻の中から体を出し、この監獄の部屋から出る。


出ると、長く、薄暗い廊下が続いている。部屋の中から思ってたよりも年季があり、すぐに足がすくんでしましそうだ。


所々にある蜘蛛の巣や、壁のシミを見て地下のほったらかし具合に少しの侘しさを覚える。


いよいよ廊下の突き当たりまで来た。そこには話通り地下の警備隊長の部屋がどっしりと構えていた。


私は周囲を見渡し右に階段を見つける。


一段ずつ丁寧に登る。老朽化でまるで階段が泣いているかのように耳を突き抜ける音が鳴る。


いよいよ明かりが見えてくる。


慎重なのか実際長いのか、とてつもなく時間がかかったことに驚きながら、周囲を警戒した。


そして、目の前に一階の廊下が見えるところまで来た。


私はひょっこりと顔を出し、人がいるか確認をする。自分でもびっくりするぐらい大胆なことをしたと、顔を出した後に気づいたが、あまりの人のいなさに一気にその不安は解消される。


見る限り階段から一階玄関までの廊下は長く、一直線だ。そこには小さく二人の警備員がいることが確認できた。


そして、地下へと続く階段のすぐ隣に二階への階段があることに安堵した。


警備員からはかなりの距離はあるが、体全体を出すと流石にばれそうだった。


頭の中で色々考えながら二人の様子を観察していると、誰かが玄関から入ってくるのがわかった。


二人の警備員は訪問者の対応で忙しそうだ。


今しかない...。


私は覚悟を決め、一気に二階への階段に登った。


「おい!誰だ!」

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