第18話 寂寥の念と復讐の念
「えっ?じゃあアロクス、お前は...なにも...」
「いいや!殺したんだ!俺が、妻を娘を、村の仲間たちを」
アロクスは嘆く。あの頃を思い出しながら。
しかし私には、アロクスさんに罪はないと感じる。多分その場にいたアロクスさん以外もそう思っていただろう。
それほどまでにアロクスさんはあの男との約束、そして友情を守りたかったのだろう。
「アロクス、顔をあげてくれよ。そんなんじゃ俺が浮かばれねぇよ...。俺なんかお前が殺したと思って、お前と縁を切ろうとしてたんだぜ」
男はそんな過去の自分に寂寥の念を覚えながらアロクスを宥める。
「落ち着いてください。地下隊長、話を聞く限り、あなたは何も悪くありません。私もあなたの責任感の強さは知っています。
自分で悔い改めるべきと決めたところだけは思い直して、これからを歩みましょう」
「ところでアロクスさんは、どうしてここで働いているんですか?」
少し和やかな雰囲気になったところで、ふと私が問いかける。
まさかそれがこの脱出計画の大きな一歩になるとは...。
「復讐です」
「え!?」
思わず3人は声が揃う。
「あの村の金持ち、それはここの主人のことです」
「そんな、、、」
私は声が出なかった。あの時見た、大惨劇の首謀者とも言えるあの金持ちが私を捕まえたマリアの父?
マリアと会った時の嫌な予感はコレだったのか。
「それは、本当なのですか?」
サルバドールが問いかける。
「はい、もちろんです。私はあの村の民。妻を狙っていると知った時から、ずっと睨みつけて見ていました。あいつは真っ赤なペンダントをしていた。
だが、事件後あいつは姿を眩ませた。
私は必死に探した。そして見たのだ。ここの主人が全く同じ、真っ赤なペンダントをしている姿を。
間違いない。そう決心し、ここで働くことにした。何年も何年もチャンスを伺った。実際、復習といっても無計画だったから何をすればいいか分からず、気づいたら警備隊長にまでなっていた。そして俺は今日君たちを知った。存在ではなく心の中を。
俺はあの事件が終わった後、こっそり村へ戻り妻と子の無残な姿を見て、誓ったのです。
あいつを絶対に許さない、と」
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