第17話 事件の真相
5分後
ゆっくりと扉が開く。
その遅さには鉄の扉ならではの重さだけでなく、これから始まる話し合いの緊張感やそのことを回避したいという気持ちも乗っかっていた。
扉の外からサルバドールと、地下の警備隊長アロクスが入ってくる。
「ア、アロクス」
数年越しの再会に何を思えばいいのかわからないという様子でポツリとつぶやく男。
「久しぶりだな」
アロクスはそう言う。ただ、その言葉のそのままの意味としては言っていないだろう。
照れ隠しや罪悪感によって冷酷な言葉選びになってしまったのだろう。
「おい、アロクス。ほんとのことを言ってくれよ。お前は妻を、あの子と子供を殺したのか?!」
男は強く叫ぶ。散々アロクスを悪く思っていた彼はおそらくアロクスからNOの返事が返ってくることを願っているはずだ。
「ああ。」
「!?」
男は驚く。疑っていたのにもかかわらず、まるでその返事が予想外だったように。
「どう言うことだよ!!なぜだ?なんでなんだ!!」
「ちょっと待ってください。地下隊長、それは本当の答えですか?」
サルバドールが慣れた呼び方でアロクスに問いかける。
「ほんと...だよ」
覇気のないアロクスの言葉とともに、アロクスの目からは大粒の涙がたくさんこぼれ落ちている。
「そんなはずはありません。私はみました。庭で狂ったように自らを咎め続けていたあなたを。言ってください。殺したか殺していないかではなく、この事件の真相を」
「ああ、分かった。
俺は妻と一緒にある村に住んだ。知っての通りその村は一人の金持ちが支配していて、そこに暮らす俺ら平民はずっと虐げられていた。
無論、そんなこと知っていたらそんな村には行きやしない。
そして妻はその金持ちに運悪く目をつけられちまった。俺と結婚していると言う事実を知っているにもかかわらず、妻を性的な目で見続けていた。
もちろん手を出されそうになったり、何か起こりそうになったりした時は、必死で俺が守った。
そしてある日、それはあの反乱が起こる三日前のこと。俺は都会へ一時移動させられ、都会で働かされることになった。
俺だけがだ。
もちろん俺は断った。妻と子を一人になんかさせられない。しかし、断れば妻を殺すと、脅され仕方なくそれを受け入れた。しかし、何かあってはと思い、村の仲間たちに妻と子を頼んだ。何かあったら守ってくれと。
もしかしたらそれがあいつらを焚き付けてしまったのかもしれない。
俺が都会へ移動して三日後、村人の大反乱が起こった」
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